その目が寂しそうで

2012/02/02 12:53




”それ“が視界に入ったのは偶然で


ふと目が離せなかった







その目が寂しそうで





旅の途中で立ち寄った活気のある小さな街。

今までの疲れを癒やすために宿についてから各自自由行動になった。

何をしようか考えてもあまり思いつかなかった僕は買い出しにいくことにした。





「ふぅ……これくらいかな」


あまり消費してなかったとはいえ大きめの紙袋を両手で抱えるほどの荷物だった。


「そろそろ時間だし、帰らないと…」


そう言って歩き出したその時“それ”は視界に映り、僕は足を止めた


小さな少年とその両親。
少年が何かを言うと母親は小さく笑って手を繋ぎ、父親は少年の頭を撫でていた

その一連の行動から目が離せなくて、

だから僕を呼ぶ声にも気がつかなかった


「ジュード!」

「っ!?」


すぐ傍で大きな声で名前を呼ばれ肩を跳ねさせながら振り返ると心配そうな顔をしたアルヴィンがいた


「びっくりした……どうしたのアルヴィン」

「そりゃこっちの台詞だよ。何回呼んでも気付かないからさ」

「そうだったの?ごめん、ね?」

「まぁ、いいけどよ。どうかしたのか?」

「え?…別に、なんでもないよ?
 あ、そろそろ帰る時間でしょ?一緒に帰ろ?」

「ああ…そうだな。ほら1つ持ってやるよ」

「ほんと?ありがとう」


両手で抱えていた紙袋の1つをアルヴィンに渡すと宿屋への道を歩き出す
未だに心配そうな顔をしているアルヴィンなは気付かないように





夕食も食べ終わり割り当てられた部屋で本を読んでいるとアルヴィンが部屋へと入ってきた
そのまま僕の方へ近づいてくると僕の隣に座った


「なぁ、ジュード」

「何、アルヴィン」


アルヴィンの方へ顔も向けずに返事をする


「こっちむけよジュード」

「……なんで?」

「いいから」


仕方なく本を閉じてアルヴィンの方へ向き直った僕は


「これでいいの?アルヴィ…」


何も言わずにアルヴィンに抱きしめられた


「ちょ、…どうしたのアルヴィン」

「さっき……」

「さっき?」

「自由時間の時何を見てたんだ?」

「別に…何も見てないよ。」


アルヴィンの顔が見れなくて、俯きながら答えるとアルヴィンは抱きしめていた腕を頭にのせてなで始めた


「何も見てないわけないだろ。あんな寂しそうな目してて」

「そんなこと…」

「ないなんて言わせないからな。…話してくれるか」

「ちょっと…羨ましかったんだあの子が」

「羨ましい?」

「あんな風にお母さんと手を繋いで、お父さんに頭なでてもらって…」

「………」

「僕にはそんな事なかったから、羨ましいなって…」


アルヴィンは撫でる手を止めずに僕の話を聞いてくれていた
だからこんなにも素直に思いを吐き出せたんだと思う。


「ごめんね、それだけだから。」

「ジュード…」

「もう昔のことだから、気にしないで」


そう言って笑ってアルヴィンから離れようとしたけど、僕が動く前にまたアルヴィンに抱きしめられた


「アルヴィン…?」

「言ってくれりゃあいつでもこんくらいしてやるのに」

「え?ちょ、」


右手で僕の頭を撫でて、左手で僕の右手を握るアルヴィン。


「これで、少しは紛れるだろ」

「何が?」

「寂しいの」

「別に寂しくなんて……」

「いいから。このまま寝ちまおうぜ」

「もう、仕方ないなぁ…」


アルヴィンのベッドに2人して横に寝転がると不意に眠気が襲ってきた


「おやすみ、アルヴィン…」

「ああ、おやすみ、ジュード」


そのまま暖かい温もりの中で眠りに落ちた






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