1年間だけの恋AJ視点

2011/12/09 08:17


※注意書き
ゲーム内でもなく現パロでもないよくわからない設定
暗殺組織に所属してるアルヴィン(26)と
癒しと破壊の能力を持ってるジュード(15)
な設定です。
一応シリーズもの
それでもいい方はどうぞ




















僕がアルヴィンと出会ってから2ヶ月経った
あれ以来僕とアルヴィンは一緒に暮らしている。


「んじゃ、行ってくるな」

「うん、ありがとうアルヴィン……ごめんね、いつも」


なんだか申し訳なくて困った様に眉を下げる僕を


「そんな顔すんなって、いつも言ってるだろ?俺がやりたいだけなんだからさ」

アルヴィンはそう言って僕の頭を撫でる。


「なんかリクエストでもあるか?」

「ううん、なんでもいいよ。作る時に考えるから」

「わかった、行って来るな」

「うんいってらっしゃい」


街へ行くアルヴィンの背中に声をかけて僕は小屋の中へ戻っていった





「ふぅ…小屋の掃除も終わったし…もうやることはないかな…?」


アルヴィンが街に買い出しに行っている時に小屋の掃除をするのが僕の最近の日課になった


「誰かが帰ってくるのが楽しみになるなんて思ってもみなかったな…」


今まではずっと独りだったから―――…
こんなにも帰ってきてくれることが嬉しいって思ったこともなかった

ふと少し前のことを思い返していると小屋の裏手から何かの羽ばたきの音がした


「?…鳥、かな…?」


とりあえず音の正体を確かめようと小屋を出で裏手に回るとそこには思った通り1羽の白い鳥が少量の血を羽根から流していた


「怪我してる!」


羽根から流れる血を見た僕はすぐに近くに置いてあった椅子を鳥の傍まで持っていって座ると、怪我に触らないように鳥を抱き上げて膝に乗せる


「すぐ治してあげるからね」


そうつぶやくように言うと膝の上の鳥に手をかざす
そして僕の手から出る光が鳥を包み込んで怪我を負った羽根は光が納まるころには傷一つ残っていなかった


「よかった…」


元気よく膝の上で羽根を広げる鳥を見て安心すると同時に自分の手を見て


「(この力でみんなを治してあげたいって思ってただけだったのに…)」


癒すことだけが出来ればよかったのにあの大人達は戦いの道具くらいにしか思ってなかったのだろうと、今はなんとなくわかるようになってきた
そこまで考えて自分の手から目を離すと、ふと視線を感じてあたりを見るといつの間に帰っていたのかアルヴィンが立っていた


「アルヴィン…?帰ってたの?」

「ああ、ついさっきな
ジュードがいないからちょっと探しにきたんだ」

「あ…ごめんねアルヴィン」

「いいや?それより小屋に戻ろうぜ」

「うん」


膝に乗せていた鳥を優しく降ろすと待っているアルヴィンの元に走り寄る


「怪我でもしてたのか?あの鳥」

「うん、ちょっと羽根を怪我してたみたいで…すぐに治ってよかった」


そう言ってアルヴィンに微笑む
すぐに見つけられたのと、治療が出来たことが嬉しくてついつい笑顔になってしまう
だからアルヴィンのつぶやきもあまり耳には入ってこなかった


「…そういう所がほっとけないのか…?」

「え?アルヴィン何か言った?」

「いーや?あ、そういや街に出た時いつもよりなんか賑わってたけど今日何かあるのか?」

「今日……?確か……」


街が賑わうほどのことがあったっけ…
今の季節は夏…だし…何かあったような…
一生懸命思い出そうと記憶を遡っていると昔のことを思い出した


「…確か夏祭り、だったと思う」

「夏祭り?」

「うん、結構大規模な祭りでね色んな所から人が集まるんだって
最後には花火があるからそれを見る為だけに来る人もいるみたい」


今僕がアルヴィンに説明したのは全部街の人が言ってたことで僕自身は1回も行ったことはない。
行ったら行ったで街の人たちに不機嫌そうな顔で見られるに決まっているから
花火だけは小屋からでも見れたけれど


「ジュード」

「なに?アルヴィン」

「その祭り…行ったことない…よな?」

「………うん」


やっぱりアルヴィンにはばれちゃうみたい…
でも不機嫌そうな顔で見られるよりは行かない方がいいと思っていると、アルヴィンから思いがけないことを言われた


「やっぱりか…じゃ、今日は夏祭りとやらに行こうか」

「え…でも…」

「今日くらい、いいじゃねぇか。人も増えてるしいちいち気にしちゃいないだろ」


な?と有無を言わさないアルヴィンの提案に僅かだけどうなずいて了承する


「よし、じゃあ出かける準備するか」

「え、今から…?まだ時間はあるよ」

「備えあれば憂いなしだろ」

「使い方が微妙に違う気がするけど…」


そうは言ってるけど内心すごく嬉しくて露骨に顔に出ないように押さえるのに必死だった


それから2人で時間になるまで祭りや今日のことをお互いに話しあった





―夜―



「じゃあ行くぞジュード」

「うん」


空も少し暗くなってきた頃、街へ行く為に2人で小屋を出る
街に着くと普段よりも数倍多く人が集まっていた


「こりゃすげー人混みだな…離れるなよジュード」

「う、うん…」


人を掻き分けつ進むアルヴィンから離れないように追いかけるけど誰かにあたったらしくバランスを崩しかける


「う、わっ…」

「大丈夫か?ジュード…ほら」


僕の声に気付いたアルヴィンが後ろを振り向いて僕に手を差し出してくる


「手…?」

「つないでた方が安心だろ?」


誰かと手をつないだこともなくて、そんなこと言われるとも思ってなかったからびっくりして
目の前の手とアルヴィンの顔を交互に見ていたらアルヴィンは僕の手をとってそのまま前へ進んでいく
つないだ手の暖かさが心地好くて、顔が火を吹いたくらい熱くなって
顔を見られない様に俯きながら


「……ありが、とう…」


小さくつぶやいた


「どういたしまして。
…さて何やりたい?」

「え…と…何があるかわかんないや」

「じゃあとりあえず回ってみるか。何をやるかはそれで決めようぜ」

「うん」



それから僕とアルヴィンはあてもなく祭りの屋台を回って過ごした






「結構取れたね!」

「ジュードも意外と上手かったじゃねぇか」

「アルヴィンの教え方がよかったんだよ」

「まぁな」


アルヴィンが見つけた屋台は射的。
銃で的を撃って倒すゲームで、アルヴィンが撃った弾は的を全て倒していた
途中から僕も参加してアルヴィンにコツを教えてもらって何個かの的を倒すことが出来た


「いっぱい回って疲れたね…」

「そうだな…ちょっと休むか」


そう言って街の中心から少し離れたところにあるベンチに座る


「どうだジュード、初めての夏祭りは。楽しかったか?」

「うん。…今まではずっと小屋の中にいることばっかりだったから」

「そっか」

「ありがとうアルヴィン、今日僕をここに連れてきてくれて」


そう言って感謝の気持ちを込めてアルヴィンへ笑いかけた


「っ…」

「?どうかしたの?アルヴィン…あ」


心なしか顔が赤くなっているアルヴィンが気になって声をかけるけど、それと同時に明るくなった空に目を奪われる


「アルヴィン、花火だよ」


ベンチに座りながら空を彩る花を見上げる。それは小屋で独りで見ている時よりも鮮やかで綺麗に見えた


こうやって誰かが隣にいるのが暖かくて心地よい。今あるこの暖かさを失いたくない
そう思って隣に座って花火を見上げるアルヴィンを見る

アルヴィンを失いたくないと思うこの感情は一体なんなんだろう……






「あなたのおかげで人といる暖かさを知りました」


「だからお願い、僕の傍からいなくなったりしないで…」




続く






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