[> ブルーブルースプリング




昔からだけどさして女の子に興味がなかった。あ、別にこれは同性愛者宣言とかそんなんじゃないよ。だけど興味ないものはないんだから仕方がない。そりゃあ可愛い子は好きだし綺麗なお姉さんにはときめく。俺だって男だからそう云う欲もあるし。え?何が言いたいか分からないって。まあ要するに


「君は例外なんだよ」


ぱちぱちと瞬きする。どうやら猿飛くんは頭を強打したらしい。
いつになく饒舌だなあと話を聴いていれば何か恥ずかしいことを言い出すしまつ。何だろうか一体。


「…それって」

「口説いてるの」

「ですよね」

夕日の差し込む教室。向かえ合わせに座って雰囲気だけは完璧なのに全くもってときめかない私は乙女失格かしら。

「それ何人に言って来たの」

「今、初めて言った」

「嘘だあ」

プレイボーイで有名じゃない猿飛くん。

「だから、欲はあるんだって。でも本気で好いたことはないんだよ。だから君が初めて。」

「なにそれ。非道い」


学内で有名(勿論良い意味でも悪い意味でも)な猿飛くんが地味な私にそんな懸想を抱くなんて信じられない。なんだよ遊びの対象に選ばれたのか。うわあ興醒めだよまったく。元々熱してもなかったけど。


「女の子泣かせてきたような人に、興味ないよ」

「おかしいこと言うよね。自分だって男の子泣かせてきたじゃない」

「記憶にない」

「知られてもいないのが一番可哀想」

五組の彼とか影で泣いてたよ。
猿飛くんの言った人はまったく知らない人だった。泣く前に告白すれば良いのに。告白とかされたこともない。あ、今されてるのか。


「お互いさまだよ」

「言えば良いのに。言わないからじゃない。」

「あのねえ、言えないからこそ高嶺の花なんだよ」

「高嶺の花は市ちゃんとかかすがちゃんとかでしょう。私は雑草です」

「なにその例え面白い。」


さして面白くもなさそうに猿飛くんは肩を揺らした。


「ねえ、猿飛くん。帰って良い」

「何で」

「お断りしたし用事は済んだでしょ。それに貴男の取り巻きに虐められそうじゃない。この現場見られたら」

「もう遅いんじゃない?廊下に女の子隠れてる」

「わあ怖い。女の子怖い」

「うん。だから君以外を俺は好きになれないんだよ」


なんで?意味が分からない。
あと廊下に潜んでいるらしい女の子が怖いなあ。怖いを通り過ぎてギャグに思えてきたけど。


「なんで?」

「だって、みんなネチネチしてるから」

「女の子は嫉妬するから女なんだよ」

「君は淡白で好いじゃない」

「だって嫉妬とか面倒じゃない」


恋愛って時間の無駄遣いだと思う。


「みんな遊びとか言うけど、一応付き合った子全員好きだったよ。でも皆嫉妬とかするじゃない。時々、真田の旦那と自分どっちが大事?とか聴く子が居たし。重いを通り越して痛い。」

「非道いなあ。今に呪われるよ」

「別れ方は綺麗だから、大丈夫じゃない」


にっこりと笑う。
ふーん。私にはとても興味ないお話だ。


「で、さあ。」


付き合ってよ。


猿飛くんが真剣にそう口にした。


「やだ」

「わあ、早いお返事」

「だって恋愛する労力が勿体無い」

「若くないよね考え。そんな所が好きだよ」

「恋愛って素晴らしい」

「そんなとこも好き」


…八方ふさがりだ。


「猿飛くんにはもっと素敵な彼女いるじゃない。三組の美人さんとか」

「別れた」

「二組の可愛い人」

「振った」

「…六組の綺麗な人」

「元カノ」

「プレイボーイだね」

「ありがとう。」


唇だけが弘を描いた。


「結局は遊びたいだけでしょ。なんなら可愛い子紹介してあげようか」

「手厳しいね。だから君以外は興味ないんだって」

「遊びの恋愛が一番労力使いそうだから嫌い。」

「遊びじゃないよ」

「プレイボーイが何を言うか」

「だから、」


ぐっと腕を掴まれた。


「…猿飛くん」

「だから、好き」

「…生まれてこの方、そんな感情抱いた人はいない。他をあたりなよ」

「君が好い」

「遊びにはもっと興味ない」

「本気だよ」

「…手を離して」

「離したら、帰るでしょ」


帰るよ。帰ってお母さんと告白されたって笑い話にする。


「俺は君に、生まれて初めて恋をしたんだ。」

ブルーブルースプリング




「だから振り向いてよ、高嶺の花」


嫌よ遊び人。









猿飛くんは遊び人っぽいなあと云う妄想。
しかしその実純情そう。淡白な女の子とか大和撫子が好きなら良い。
しかしそんな子には見向きもされない。年上とか気のキツい子とかに好かれそう。

別れ方とか壮絶だろうな。






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