[> 鬱血に恍惚







この人の腕や指はこんなに細いのにこの力はどうやって出せているのだろうか、名字名前はそう呑気にも考えていた。場違いだ、本能の叱咤に理性は何故か反応しない。不思議に名前は冷静である。

「うっ、あ」

気管がぎゅっ、ぎゅっと締め上げられている。しかし何故だろうか、名前は声を出したくなって呻きに近いそれを出した。

「あ、」

別に何を伝えたいわけではないのだから、唇は単語すら形にしない。ただ『あ』と『う』の繰り返し。しかし相手は何らかの意思表示と捉えたのか、今まで気管を締め上げていた手を退けた。
げほ、名前は酸素に咽せて体をくの字に曲げた。

「名前、名前」

「ああ、ああ吉継さま」

枯れた声と涙に名前はほうっと深い息を洩らした。吉継さま、そう呼ばれた者は目を細くして咽せる名前の姿を見詰めている。やれ苦しいか、愛い奴め、本音と建て前が同時に出て来て唇をくすぐった。

「愛い奴め」

結果、本音を呟く。名前はくの字の体勢のままで笑みを浮かべた。
肺は酸素とまた仲良くし始めたらしい。名前は満ちてゆく肺の中の物を一度意図的に止めてから、はあと深く深く息を吐いた。

「意識を早にもて、我は気が短い」

「はい、今」

包帯越しの体温に名前は笑む。ああ生きてる、活きてる。そう呟けば、吉継はきゅっと口角を上げた。

「もがけ、もがけ。我はぬしのその様にいたく」

いたく、その言葉の続きも聞かず、名前は目を瞑った。
真っ白い名前の首筋についた紫の鬱血に恍惚とする二人で、互いに想う劣情。






首を絞めてどうのこうのは鉄板ネタですかね。
というか自分、首絞める話を書きすぎだろう。


 

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