[> 葬りませう |
南のあの熱と湿気はいまだに忘れられず、それは即ち死んでいった彼らを忘れられないという意味でもある。夜の端っこではこちらに恨み言を呟く。ああ、生きていてすまない、僕もそちらに早にゆきたいよ。昼間の端っこでは身を寄せ合って口々にやれ、日が疎いと嘆く。寄生虫のごときその姿に少しだけ笑めば、また夕方の誰そ彼時。 橋を渡ってみれば、かれらの仲間が見えた。 「君は彼らじゃないんだね。」 欄干に肘をつけた少女が見える。横顔は分からない。もしもし?繰り返しの言葉を吐けば、少女がこちらを見た。 「もうすぐ夜だね」 こちらの言葉にこくり頷く。もしかしたらこの子は口がきけぬのかも知れない。死人は口なしなのだから。 「君は端に往かないのかい?」 少女が首を傾げた。彼らの集まりを知らないのかも知れない。僕は親切丁寧に教えてあげることにした。 「夜の端っこで、君と同じような者達が集まっているんだ」 はたして少女は分かったのか、傾げていた首を真っ直ぐにして頷いた。 「夜までの間に早く君もおゆき」 ほら、端っこを指差せば、少女がぼうっと崩れた。 崩れた瞬間、煌びやかな夕日が目に入って目蓋を閉じた。 葬りませう 「巽さん、関口先生」 目蓋を開けば柔らかく笑う少女がいた。名前くん、名を呼べば白魚のような手が頬に触れて、少し目を細くした。 若さゆえの罪作りと、歳ゆえの臆病さが気に入っている夕暮れ時。 本文中のタイトル以前は関くんの夢です。 しかし名前変換少ないっ ←|→ |