[> 絡んだのは記憶です。












昔の夢をみた。愛して下さいと恋うた女をねめつける。冷たい仕草だと笑われようが、その女に軽蔑を抱いてしまったのだから仕方がない。愚かしいな、ぬしは。嘲笑えば細い肩揺れた。可笑しなものだ、人の機微は実に可笑し。そんなことを昔、思った。


「吉継さん」
「…名前か」

揺すぶられる感覚に目を覚ます。ちらりと名前を見れば、長襦袢姿ですぐ横に座っていた。

「如何した」
「寒いのです」

か細い声に手を伸ばす。湯殿上がりか、ひやりと冷たい頬に触れる。

「共に入るか」

ほれ、布団の端を捲れば名前がゆるゆるとした動作で入って来た。冷たい足先が触れる。長い睫毛が揺れた。冷たい髪が頬に当たって、包帯が少し濡れた。
冷たさを紛らわすように名前を抱き締める。冷たい体躯だ、寒い。

「寒い」
「吉継さんは温かいです」
「どういう意味か」
「そのまま。」


背中に名前の指が触れる。つうっと形を成す跡に首を傾げる。

「名前、」
「ひみつ。」
「言わぬが花か」
「さあ」

抱き締める力が増した。少しの答えと呟きのあと、ふと思い出した昔に苦く笑った。


「愛して下さい」




 

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