[> 純情に背く視線






布団にぐったりと横たわる四肢を見て、大丈夫?だなんて自分でも嘘臭いと笑ってしまいそうなセリフを呟いた。

「はい、」
「そっか、なら良かった」

名前ちゃんが寝返りをうつ。
黒い、長い髪が足に触れた。

「勘太郎さん」
「うん?」
「…やっぱり、なんでもないです」

足にかかった髪を指先で遊ぶ。この子をこうしたのは幾度目かなあ、なんて考える。
…ああ、確か五回目だ。初めは酔った(酔わせた)名前ちゃんを部屋に連れ込んだんだ、そうだったそうだった。思い出した。以来、時折僕から誘っては体を重ねる。


「不純だねえ、お嬢さん」

名前ちゃんの顔を覗き込めば、大きな濡れた瞳と目が合った。

「不純ですね。でも、貴男には言われたくありませんね」

形の良い唇が開いて閉じた。

「…まだ恨んでる」
「女だもの、恨みますよ」
「そうだよね、あれ、無理矢理だものね。」
「自覚おありだったのですか」
「うん。初めっから、君を手込めにする気だったからね。」

耳に触れる。ひやっとした感触と温度に目を細める。

「僕はさ、名前ちゃんの嫌がる仕草が堪らなく好きなんだよ。生娘みたく泣いてさ。まあ、初めはそうだったけど」

名前ちゃんがぱちぱちと瞬きした。
黒と白。僕とは対象。

「私は、勘太郎さんのその時に見せる皮肉っぽい笑みが好きですよ」

薄く唇が弘を描いた。

「名前ちゃんって男を見る目がないよね。」

首筋に触れてからゆっくり唇に寄った。
またこの初々しい子を、とどこか覚めた自分と本能とが一緒になって彼女の名を呼んだ。








勘ちゃんは次の日、春華とヨーコちゃんから徹底的に目を合わせてもらえないフラグ。


 

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