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「官兵衛さんは善い方ですものね。ねっ!吉継さんと違って、ねっ!」
「分かった、分かったから小生に何の用だ」
「吉継さんに呪いをかけられたのです」
「はあ?」


丑三ツ時、襖を開く音と名を呼ぶ声に目を覚ませば、暗がりの中で声を震わせる名前が立っていた。何事だ、起き上がって用を聞けば実に嫌な顔をしたあと、ポツリと話し始めた。
曰わく、刑部に呪われたと。

「お前さん、一体何をしたんだ」
「吉継さんと怪談話」
「お休み名前」
「官兵衛さああん!私を独りにしないでぇえ!」

布団を引っ張る名前に抵抗するのも疲れて、おとなしくまた起き上がる。優しい、小生すごく優しい。

「あれだろう、眠れないから一緒に寝てくれとかそんなのだろう」
「近いっちゃあ近いですけど、遠いと云えば遠いです。」

はあ?と名前を見れば、うーんと首を傾げた。

「去り際に吉継さんが、やれぬしの後ろに見えるわとボソッと仰有って」
「見えるって」
「いや、多分ウソなんですよ。きっと大谷ジョークです。でも布団に入って目を瞑るとあああ…」

がくんとうなだれた名前にあーと頷く。確かに呪いだ。

「で、小生はなにをしたらいい。刑部でも倒しに行くのか?」
「まさか。添い寝して下さい添い寝」
「却下」
「官兵衛さああん!」
「…分かったから大声を出すな。耳が痛い。」

キーンと響く耳鳴りに眉を潜める。名前は泣きそうな顔でこちらを少しばかり睨んだ。なんだ、小生が悪いのか。絶対悪くないと思うが。

「あのなあ名前。お前さんみたく年頃の女がだ」
「はい」
「小生みたくいい歳の男と添い寝は倫理的に駄目だろう」
「はい、でもなんで?」
「だから!間違いが起きたらどうする!」


少々名前はぽかんとしたあと、ぽんと手を打った。嫌な予感がする。いや、嫌な予感しかしない。


「大丈夫ですよ、官兵衛さん!」
「なにが」
「官兵衛さんは善い人なのでそのようなことは万が一にもなさいませんから。ねっ?」

小生には残念ながら良心はないんでね、と追い返せば良かった。先に言うのはズルいだろう。





黒田さんは凄く可愛い大人だなあ、と。善いか悪いかでは微妙な顔になりますが。

 

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