[> 匿名希望






(『無題希望』の続編)
(管理人の良心によってスッパリ切られたバージョン編)
(なんか色々と酷い)





先日怒られたのを反省して、私は静かに吉継さんの部屋に入った。

「朝ですよー…。私は起こしにきただけですからね。本当に、ですからね」

静かに布団の横まで行って座る。残念ながら吉継さんは横を向いていて眺められない。ううむ、見たいなあ寝顔。
つい欲求に負けてしまった私はまた静かに移動を始めた。

「ここなら見え…」

見える、そう言いながら顔を覗きこんだ瞬間、急に吉継さんはうつぶせ寝を始めた。
「……。」

起きてるのかも知れない。
一瞬どきりとしたあと、ふうと息を吐いた。
この人が起きていたら私が部屋に入った時点で罵詈雑言の嵐だろう。それがないというあたりで起きている可能性はぐんと低くなった。それに、もし起きていたならこんな隣がら空きのまま寝れな…、

「あっ」

良いことを思いついた。いいこと。

「失礼致しまーす」

ひやり冷たい足先を布団に入れる。おおお、暖かい。少し体温を感じてにやりとした。


「うはー、吉継さんの体お…」

いや、まて。この状態で吉継さんが起きたらどうするどうしよう。
……まあ良いか。

もういっそのこと開き直った私はよし、と不思議な決断をしてからいそいそと体を滑り込ませた。うへへ、あっ涎が…。

「あったかーい」

布団、凄く暖かい。
開き直ってからもはや大胆にすらなった私は、背中を向けて眠っている吉継さんの背中に少し触れてみる。

「わあ、わあ」

なんという感動。今まで輿に近付くだけで数珠が飛んできたのに!

「よ、吉継さん、起きてませんよね」

一応そう訊ねてから、おずおずと手を回す。

「わあ!」

今にも叫びそうなのを我慢しつつ、感動と歓喜に背中に密着してみる。もうここまでやったから怒られようが数珠飛ばされようが平気だ、私。

「はあ、吉継さーん」

吉継さん大好きですー、思わず呟いた言葉に、あらやだと恥ずかしくなった。いやいや、色々恥ずかしがるところ間違えているけども。

「吉継さん、起きてませんよね」

なんとなく呟きながら吉継さんを見れば、あの逸らしたくなる瞳があった。

「…え、いつから」
「ぬしが入って来たところからよ」
「初めっからですか、そうですか」
「して、手はいつ離す」
「二度寝してからとかダメですか」
「そうか、若くして死に逝くか。悲しいカナシイ」

思わず手をぱっと離した。私は物分かりの好い子なのです。

「名前」
「ひい、すぐに帰ります。帰りますからあ!」

くるりと吉継さんは寝返って、私と向き合う体勢になった。
これは、いよいよ呪われる。直感的に悟った私はそのまま身をよじって後退した。

「逃げることはなかろ」
「いやいや、絶対吉継さんの生涯をかけた呪いを賜りそうなので嫌です。」
「…」

素直に思ったことを口にすれば、吉継さんに冷たい瞳で見詰められた。

「ご、こめんなさ」
「我の話しを」
「えっ呪わないのですか」
「呪うと一言漏らしたか」
「いえ…」

えっ、じゃあ生きてていいの?抱きつくのもいいの?

「やったああああ!」

私はあまりの嬉しさに吉継さんの言葉も聴かぬままに部屋へと走って戻った。
聞こえていたのは否めない事実。


「妙な告白の真を問いたい」





良心によってそこまで迷走しませんでした。本当はもっとこう、色々と濃かったのです。


 

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