[> 被虐心、






(権現様のようすがへーん)


勢い良く畳に頬を着けた。途端、くらくらする脳髄が視界を一度遮断した。

「ワシはお前に何と言った」

徐々に回復する視界で声の主を見る。鉄格子の向こう側、其方は自由が売り。

「名前、」
「さあ、確か良いことではなかったはずです。」
「お前にとってか?ワシにとってか?」

問い掛けに目を細めた。

「家康公にとって」

私の言葉に公は眉を潜める。私は最近悪くなってきた視界を少し狭めて笑った。

「お前は何故懲りない、何故言うことを聴いてはくれない」
「何故でしょう。性分ですから」
「意地の悪い」
「そんな女を気に遣る貴男は趣味が悪いですよ」

そうかも知れないな、そんな言葉にまた目を細めた。知れないではなくそうでしょう。


「なあ、名前」


いつもの声音に心持ち痛い首を傾げる。

「もう、ワシ以外とは目も合わせないで呉れな」

どうだか。幽かに呟いたはい。と本音もいつも通り。



「被虐心ばかりの私です。」







ドメスティックバイオじゃなかった、エスエやっぱりなんでもない。


 

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