[> 夜の童話







溜め息混じりの声に中禅寺さんを見れば、汗のせいで額に張り付いた前髪を掻き上げた。

「名前君」

畳に伏せっていた重い体で寝返る。

「中禅寺さん」
「ほら、体を起こしたまえ」

中禅寺さんの手に引っ張られて無理矢理に立たされる。

「あ」

覚束無い足にぐらりと中禅寺さんの方へ体が倒れる。
ふわりと着物に焚き付けられたお香の匂いと一緒に抱き留められる。

「中禅寺さ」
「名前君」

耳元で低い、心地の好い声がした。
着物をぎゅっと握り締める。中禅寺さんがそっと私の額に口付けた。

「きみ、名前君」

はい、声にならない返事でもって彼を見上げれば、品良く中禅寺さんの唇が弘を描いた。


夜の童話
詳らかに隠せや宵闇


絡ませた指と舌に熱が籠もる瞬間が一番好きだと笑った。







何故私の書く中禅寺さんは毎度毎度不倫してるのか。


 

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