歯ブラシや洗顔から化粧水などの生活用品コーナーは安い物くて機能性が良さそうなものをポンポンとカゴに入れていく
「お前買うもの迷わないな」
「そうかな?」
サイタマくんは私の買い物に律儀に横を歩いてついてきてくれている
「女っていろんな店入って色々見たりするもんじゃねえの?」
「私、長い買い物あまり好きじゃなくて」
そうかと鼻をほじりながら興味なさそうに返される
「次は布団買いに行くからまだ付き合ってね」
「おーう。荷物持ってやるよ」
「悪いからいいよ」
「気にすんな」
会計を済ませたなまえの手からさっと袋を奪い去って先を歩き始めた
サイタマくんは優しい
布団売り場についたなまえはすぐに店員を呼び、おすすめなどを聞いたりあれこれ指示を出して会計を済ませる
「サイタマくん住所教えてー」
「なんで?」
「布団送ってもらうから」
「おーう」
住所を教えてもらい手際よく店員に発送届けを出すなまえの姿にサイタマは感心した
「なんで送れないんですか、この金額だと配送料かからないんじゃないんですか?」
「いや、Z市の外れの方だとちょっと...」
「別途で送料払いますよ」
時間がかかりそうだと思い少し離れたところで加齢臭に効く!と謳い文句を掲げるマクラを見つめていたサイタマの耳になまえの強めの声が聞こえてレジへと寄る
「なんだなんだ」
「サイタマくんここの住所だと送ってくれないって」
「あー、仕方ねえな」
「すいません」
「車で来てるわけじゃないので配送して欲しいんですけど」
「すみません」
「配送できない理由を教えて欲しいのですが」
「すみません」
「あの、理由を教えて頂きたいのですが」
なまえが何故配送できないのかと言葉は荒くないが圧がある声色ですみませんの一点張りの店員へ問い続ける。
サイタマはこんな一面もあるのかとぼんやり思う。やんややんやと上部のすみません店員と説明を求むなまえの終わらないやりとり
「俺持って帰ってやるからいーよ」
「はい?」
「おおうびっくりした」
「ごめん、ちょっと荒ぶった。ごめんね」
言い合いしてる中、急に話しかけられたなまえの強めの返しにサイタマがビビる
話しかけたのがサイタマだと気付いてしゅんと小さくなった
「俺が持ってくから行こうぜ」
「布団だよ?手間かかるじゃん」
「大丈夫だ」
いや、でも、と布団を持たせる罪悪感のなまえと上部のすみませんしか言わない店員に話の終わりが見えないと思ったサイタマがうるせえ俺が持ってやるとキレて終わった
買い物はまだあるので預かり所に荷物を渡して手ぶらでモール内を歩く
サイタマの服を借りているなまえはジョークTシャツとスウェット姿なのに気付く
服も買わなきゃだな
「次は服を買いに行ってもいい?」
「おう」
自分の好みの系統の店を見つけ、外着用と中着用をそれぞれ数着ずつと靴を2足ほど購入した
「これとこれを今着て行きたいのでタグ外してもらってもいいですか?」
「かしこまりました」
試着室を借りて着替える
着心地はなかなかいいので他の服も期待ができそうでよかった
会計をしているとサイタマくんが感心したように本当に迷わねえなと言っていた
隣に下着屋があったのでサイタマくんは気まずいだろうとベンチで待っていてもらう
すぐに数着の下着いれた袋を持ってなまえが帰ってくる
「お待たせ」
「おー、本当に早いな」
ベンチで、でろーんと座っているサイタマくんが思っていた以上に私が早く来たからか僅かに瞠目してる
「荷物持って貰ってるのに悪いからね」
「そうか?....はらへった」
「お昼まだだもんね、その前に1つ寄りたいところある」
ショッピングをしててふと思ったがこの世界は私のいた世界に酷似している。
もしかしたらお金がおろせる淡い期待を試しにATMコーナーへ
コンビニに置いてあるようなの沢山の会社が入っているATMの前へ、引き出しのボタンを押してカードを入れてみる
異世界で異世界のカードを使うのは何か悪いことをしている気分になって鼓動が早まってきた
暗証番号の入力画面
四桁を打ち込む
「できた」
私の貯金全てがちゃんと入っていた。
ATMの上に書いてある使えるカード会社の一覧を見ても私の使った銀行名は書かれていない。
使えるのは今だけなんだと思う。
なまえには根拠のない確信があった
よし、と1つ決意をして、大金を所持する覚悟を決める。万が一強盗にあってもサイタマくんが何とかしてくれるだろう。怪人を倒していたみたいだし、と他人任せな考えで貯金してあるお金を全ておろした。
ATMの限度額はどうしたと思うくらいには貯金があった。
備え付けの紙袋にせっせと詰め込み数袋分の重いそれを出来る限りバッグの底へと押し込みサイタマくんの待つ場所に向かった
こっちで口座作らないといけないな
今だけお金持ち
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