ごちそうさまでしたと2人揃って手を合わせ、私が洗い物をすると言い切りサイタマくんの茶碗もろもろを奪い取る

嫌な顔をせずにありがとなと短い礼を伝えてくれる彼になまえは信頼を少し感じて嬉しく思った

かちゃかちゃと食器がぶつかり合う小気味良い音と、サイタマくんが見ているテレビの音が混ざり合う
怪人に襲われた恐怖は拭いきれないし異世界の単語に現実味がなくて受け入れていないのも事実、だけどサイタマくんといるとなんとかなりそうな安心感が心地良く身体を包む

キュッと水を止めながらなまえは終わったよと言葉を投げる
腕で頭を支えて横になるおじさんみたいな体制のサイタマくんがおーサンキューなんて気の抜けた返をしてくれる

テーブルの前、サイタマの横へ座りこみバッグから見つけた財布を広げる

「これって使える?」

一通りの小銭とお札をテーブルへと並べて問いかける

「どうした急に」

抑揚のない声とともに横になっていたサイタマが起き上がりお金を見つめる

「一応さ、異世界らしいから」
「そういえばそんなこと言ってたな」
「だからお金使えるか聞いておこうと思って」

ジーっとまん丸の目が持ち上げた小銭を見つめたりお札を光に透かしたりしている

「これ使えるけど」
「本当?!」
「そっちも同じなんだな」

手渡されたお札をマジマジと見ると私の知っている偉人とは少し違う風貌の男性が印刷されていた

「若干、違うもの」
「へぇ」
「なんでもありだね」
「そうだな」

その後改めて確認したバッグの中身は私が普段持ち歩いている中身と同じもので、メイクポーチが入っていたことにより明日のスッピンの心配はなくなった


ふぁ〜と空気が吐き出される音が聞こえる
サイタマが欠伸をしたのを見てなまえにも欠伸がうつる
ゴソゴソとテーブルをよけて布団を敷くサイタマの邪魔にならないように隅へよる

「俺あっちで寝るから」
「私床で寝るよ」
「いい、お前そっちで寝ろよ」

じゃあお休みと半ば強引に敷かれた布団へ指を刺してボリボリと片手で頭を掻きながら部屋を出て行ってしまった

布団へ潜り込んだ私はこの世界に来る前に感じたものと同じ眠気が襲ってきて、ゆっくりと意識が微睡みの中へ落ちていった

夢であって欲しい

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