学校に行くと校門で、太陽のように眩しい笑顔のアスモデウス君がお出迎えしてくれた。


「お早うごうざいます入間様!真凛様!」
「お…はようアスモデウス君…」
『お…はよう』
「どうぞお二人共"アズ"とお呼びください!あっお鞄お持ちいたしますっ!」
「いや!いいよ悪いよ!」
「ですが…」
『私も大丈夫だから!ね?』




今日は初登校日。正直なところ二人で登校拒否したいね、とヒソヒソ話していたが朝からおじいちゃんやオペラさんが大量の入学祝いやらでお祝いしてくれて…。
その上「オペラと二人で刺繍も入れたの!慣れないことで疲れたけど楽しくってさあ!」と新調された制服を差し出されては拒否なんてできる分けなかった。オペラさんの圧もすごかったし。





『使い魔召喚?』
「はい、バビルスの伝統行事です。」



目的地に向かいながらアズ君が今日のカリキュラムを教えてくれた。



「召喚した使い魔の質で生徒のランクを計ります。そしてそのランクを上げていくことがバビルスでの成績に繋がるんです。」
『へぇー、重要な行事なんだね。』
「(使い魔って人間食べたりしないかなぁ)」



大きなドアを開けるととても広い大広間に出た。大勢の生徒が集まっておりにぎやかでは有るが重厚感が有る空間にすこし緊張が走る。
この結果でクラス分けもされるらしい。アズ君から担当官は怖くて厳しいと有名…だなんて事を聞いてると物々しい雰囲気を纏ってその先生が入ってきた



「粛に。監督官のナベリウス=カルエゴである。」

ざわついていた生徒たちが一瞬にして沈黙へ変わる。



「この行事は常に私の担当だ なぜか?
私が常に厳粛であるからだ。
貴様等が使えない"ゴミ"かはたまた多少は使える"ゴミ"かを判断する。」



「例えば」



私達の方に近づいてくるカルエゴ先生。
目の前に立ち、睨みつけるように言い放つ。



「…祖父の威光を借りて栄えある場で下品な呪文を唱え、あまつさえその日の内に乱闘騒ぎを起こすようなゴミが居たら即処分対象である。
故に出来の悪い者は即刻 退学処分とするのでそのつもりで。」



牽制するように言葉をぶつけるカルエゴ先生。


「敵意丸出しですね、あの男」
「うん…」
『完全目付けられちゃったね…』




カルエゴ先生はだいぶ入学式のあの騒ぎが気に食わなかったようだ。
おじいちゃんの威厳とか借りてないです!私たち巻き込まれただけなんです!
無実を訴えたいけどそんな事も言える訳もなく。もやもやだけが残った。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




説明も一通り終わり、生徒たちがどんどん使い魔を召喚していく。その容姿は様々で、ドラゴンのようなもの、人間界の動物に似てるもの、雲のような自然を模したものなど様々だった。


「わー、すっごいなぁ…」
『ほんと、不思議な生き物がいっぱい』
「ねぇ真凛、僕たち魔力無いけど使い魔って出せるのかな…」
『あっ!出せないかもしれない…!』
「確か出来が悪いと退学って言ってたから…もしかして召喚できなくて退学になるかも…!?』
『それだぁ!』


やった!やった!と手を取り合って喜ぶ。学校側から退学にしてもらえば万々歳じゃないか!カルエゴ先生に感謝だね!
なんて言い合っていたら、向こうからワァッと歓声が上がるのが聞こえた。
アズ君がドラゴンと蛇を合わせたような、かっこいい使い魔を召喚していたのだ。



「凄いねアズ君!」
『うわーかっこいい!』
「有難き御言葉です!」



(ゴルゴンスネーク…
(流石はアスモデウスの家系といったところか…入間に敗れたと聞いたがあの実力で…?)
(信じがたいが…まぁすぐに分かる…奴が如何程の実力か…)



そうこうしている内についに私達の番になった。ニコニコしながら中央へ向かう兄。



『(お兄ちゃん!頑張れ!目指せ退学!)』
「(ヘラヘラしおってぇ…やつにそっくりだ!あのアホ理事長に…!!!)
(だがこの行事の権限者は私…!少しでもヘマをしたら即退学にしてやるわッ)」
『(退学♪退学♪)』
「(これで失敗したら退学だ…祝!生還!)」



思わぬところで三人の思惑が合致しているとは知らぬまま
羊皮紙をロウソクにくべたその時、もの凄い光が放たれた。



「えッ」
「はッ!?」



光が止み、皆で目を開けるとズズ…と召喚された使い魔が出てきた。
「出たッこ…これが僕のー…」



使い魔ー…



その魔法陣に召喚されたのは紛れもなくカルエゴ先生だった。





「「はぁあぁあああああーーーーー!!??」」



「何だこれはッ一体貴様何をしたッ!?」
「僕にもさっぱり…!!」
「とにかく止めろッ今すぐ召喚を止めるのだッ!」
「はっはいッ!」
「バカもの!!こういうときは押すものだ!」
「すっすいません!!」
『わっ…私も手伝う!』
「…!!!違うッ!足ではなくてこちらへ来て私を下へ押…」




想像以上に目立っているのに焦った私。早く収束しなきゃと二人でカルエゴ先生の足を持ち上げた。
カルエゴ先生が何か言い終わる前にスポッと全身が抜け、向かいの魔法陣から出てしまった。



ボフンッと大きい音がして煙が上がる。
「なっ、せっ先生…」



そこには…


可愛らしい小鳥の姿に変わった先生が召喚されていたー…。




「先生!大丈夫ですか!?というか先生なんですかッ!?」
『うわぁ…やってしまった…』
「入間様…感服致しましたッ!!」
「何がッ!?!?」
「まさかカルエゴ卿を使い魔にしてしまわれるとは…ッ!」


混乱してる私達を尻目にアズ君が感動して泣いている。
周りの悪魔も 悪魔を召喚!?前代未聞だぞ!? とめちゃくちゃザワザワしているけど
私達人間だから多分こうなちゃったんだ…と納得したくない納得をしていた。



「(ありえぬッ…この私が使い魔などとッ…!)
ふざけるな貴様ぁああッ今すぐ契約を解除しろッ…!」



怒ったカルエゴ先生が攻撃しようとしてきた、が



「さもなく…!!ッぶぇあああああああああぁ」
『「先生ーーーーーーーーッ!!!」』




先程教えて貰ったとおり、とっても痛そうな処罰(しつけ)が下ったのであったーーーー。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






『カルエゴ先生…お兄ちゃん…大丈夫かな…』
「ささっ次は真凛様の番ですよ。」
『うん…』



兄はボロボロになった使い魔…もといカルエゴ先生と一緒におじいちゃんのところへ行った。
使い魔ってクーリングオフ的な事できるのかな…血の契約より濃いって言ってたけど…。

ざわついてた会場も落ち着き、私も召喚の儀を行う事になった。先程の出来事で魔力ゼロでも召喚できてしまうのは分かったから私も何か召喚してしまうんだろう。
せっかくの退学プランも破れてしまったしおとなしく儀式を行う。
どんなものが出るんだろうか。どうしようまたカルエゴ先生みたいな事になってしまったら…。その場合誰が犠牲になちゃうんだろう…。



悪い想像ばかり思い浮ぶ中、ドキドキしながら羊皮紙をロウソクにくべた。
モクモクと煙が上がり形になっていく。出た…!これが私の使い魔ー…!



私の心配とは裏腹に、ワンッと可愛らしい声を上げ出てきたのは子犬のような使い魔だった。



『えええ!!??すっごく可愛い!!』



「これはッ…!オルトロス!」
『オルトロス?』
「はい!二つ首の番犬です。三つ首のケルベロスが有名ですがその弟と言われております。まだ子犬ですがとても強い使い魔ですよ!
このような高等な使い魔を出すなんて流石真凛様…!素晴らしいです…!!」



アズ君がすごく褒めてくれるけど見た目的には可愛い子犬にしか見えない。お顔が二つあるところ以外は。
くりくりなお目々でジッと見つめられ思わず抱きしめちゃう。この子もワフワフと尻尾を振って擦り寄ってきてくれた。


地獄の番犬なんて嘘だよ。こんなに可愛いもの。
先程の騒動もありとっても癒やされる。こんな可愛い子が使い魔で安心した。ずっとこのままの姿で居てくれないかな。




家に帰ってその事を話すと兄はいいなぁ…僕はがっつり一年契約なんだって…ととても暗い顔で話された。
ちなみにカルエゴ先生はあれからしばらく寝込んだらしい。もう二人共不憫すぎて同情するしか無かった。



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