「ええと、これは?」
「我輩特性究極甘やかしセット」
私達が混乱してるまま、サリバンさんが言う。
「実は我輩独り身でねぇ、ずーっと憧れだったんだ「孫」を持つのが。
入間くん、真凛ちゃん、我輩の孫になってくれないか?」
『「ええええええええーーーーーーー?????」』
まさかの展開に驚きを隠せない。だってだって、想像してたものと全然違ってた。
「羨ましいんだよ友達の孫自慢が!!何でも買ってあげるし、でろっでろに甘やかすから!!ねっいいでしょ!?」
サリバンさんは泣きながら私達にお願いしてくる。
ん…?お願い…?
私は確信した。やばい、お兄ちゃん、断れないかも。
「いっ、いいでしょって…拒否権はあるんですか?」
おお!珍しく兄が断れそうな雰囲気になってる!心の中で頑張れ!とエールを送る。
「君達の意思は尊重するよ。嫌なら断ってくれてもいいよ。」
兄妹顔を見合わせて頷いた。よし、断ろう。流石にこんな異常な状況だし、魔界でなんて暮らせない。
「僕…」
「断って良いと言ったけど…しかしッ!だからこそ!僕は全力でお願いする!!!!孫欲しい!!!超欲しい!!!孫になってください!!!!!!!」
猛烈なサリバンさんの猛プッシュに兄は言葉を続けることができない。
「少しでもこの老人を哀れだと思ってくれるなら…!この手を取ってくれないだろうか…!!!
どうかこの老体の夢を…ッ、願いをッ叶えて欲しい!!お願いだ入間くん!!真凛ちゃん!!!」
「こ…断れない…。ごめん真凛…。」
『お兄ちゃんんんんんんんんんんんんんんん』
私のエールも虚しく、結局断れずに契約書にサインしてしまったのだった。
「わーい!わーい!初孫だー!」
喜びの舞を踊ってるサリバンさんを尻目にこっそり兄に話しかけた。
『お兄ちゃん…お願いって言葉に弱すぎるよ…。』
「ごめん…ごめんね真凛…せめて真凛でも人間界に返してくれるように言うよ…」
『お兄ちゃんが残るなら私も残る。一人にしておけないもん。』
「でも…」
『約束したでしょ。どんな辛い時でも二人で助け合っていこう、って。』
「ううう…断れない兄でごめんね。」
『私が断っても良かったんだけどね、ちょっとサリバンさんが可愛そうになっちゃって…。』
私は(多分)いざというときには断れる性格だ。でも、あのサリバンさんの必死な姿を見たら断るのが申し訳なくなってきた。
「さーて、そうと決まれば!」
サリバンさんはまた魔術をかけたのだろう。一瞬で周りの家具や調度品が一人部屋の空間に様変わりした。
私達が驚いてると、私と兄のお洋服も変えられた。淡いピンク色に赤いリボンがついたトップスと、プリーツスカートの可愛い洋服。あれ?これ学校の制服に似てる。
「なっななな何ですかこれっ」
『制服?っぽいけどなんで…』
「サプラーイズ!いやー入間くんも真凛ちゃんも似合うねー。可愛い初孫だもの、衣服・食事・住居そして…教育!君たちを悪魔の学校に通わせてあげよう!」
『「悪魔の学校!!!???」』
「君たち幼い頃から働かされてろくに学校通えてなかったでしょ!?大丈夫!手続きはもう済んでるんだ!僕は君たちのおじいちゃんだもの!」
「おじいちゃん…」
『おじいちゃん…』
「あぁいい響きだね"おじいちゃん"!入学式では校門で写真撮ろうね!」
「いやっ…あのッ…ちょっ…」
「人間が入学した前例はないけど、人間とバレなきゃ食べられる事もないよ。」
『「バレたら食べられるの!!??」』
全力のツッコミが思わず出る。この人、危ないことをサラッと言ってきた。
そうだ、あまりの展開についていけてなかったがここは魔界で私達は人間だ。
思わず可哀想になって契約しちゃったけど今物凄く後悔した。バレる=死 なんて聞いてない。
『すみません契約破棄して良いですか』
「あの…僕も…やっぱり…っ!」
「いやーでも入間くんと真凛ちゃんがいい子で良かったよーもし断られたら」
「僕は君たちを今夜の食卓に出すしかないもの」
恐ろしい悪魔の姿と発言に、私達はもう何も言えなくなったのであった。