5 親バカ

それからは大忙しである。

まず私は、竹中半兵衛…もとい父上、と呼ばなければいけないのだけれど半兵衛さんとよんでいる)…の養子として、何故か祭り上げられてしまっていた。今まで男として過ごしていたため娘ではなく息子として豊臣軍の一員に加わった私は半兵衛さんが才能に惚れ込み直々に引き込んだとか、実は半兵衛さんの隠し子だとか(間違いじゃない)、かの武田信玄や上杉謙信から兵法を学び、名高い武士たちから鍛えられたとか(これもあながち間違いじゃない)、とにかく私は現実以上に持ち上げられているようだった。
執務の息抜きに道場に行くだけで、周りの人に深々と頭を下げられてしまう始末である。十五になってひょろひょろと伸び、4尺6寸(約175センチ)まで伸びた背は、いつも通りにしているだけなのにしゃんと伸びていて美しいと褒められる。
誤解が激しすぎてもう本人がついていけないレベルだけれど、一応期待に応えようと頑張っているつもりだ。
小太郎ちゃんにたすけて貰いまくりだけど。

しかも、それに拍車をかけているのが、長く離れていたせいか何かを拗らせた秀吉様と半兵衛さんである。
秀吉様はというと、一日に一回は私を呼び寄せ珍しい菓子を食べさせ、何か欲しいものはないか、と顔をほころばせ聞いてくる。ないと答えるとしょんぼりしてしまうので、私は秀吉様の部屋にいくたびに毎回何か適当な安いものを考えていかなければならない。
それに対し半兵衛さんは執務中は鬼のように厳しいのだがそれが終わるとまるで打って変わり自室に呼び寄せこれでもかとばかりに甘やかすのだ。
そしてたまに女物の着物を持ち出し、着てくれるよね?と笑顔で押し付けられる。半兵衛さんは私が男の子として育ったのを憂いているようで、女の子っぽくしていると喜ぶのだ。
そんなところをみていると、なんだか母親らしいなと思うのだが、私の私室に女物の着物が増えていくのはいただけない。断ろうにも、着ると、涙を浮かべさすが僕の子だ…と抱きしめてくるので口の端が引きつっても嫌ですとは言えない。



BACK



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -