2 屋根裏の攻防

そうして私は今、大阪城の屋根裏にいる。小太郎ちゃんは、小さい隙間から中の様子を見ていた。その部屋の中には、天下を取るだろうと言われている豊臣秀吉がいるらしい。

大阪にくるのは初めてだったのが悪かったのか、なんだか気分が高揚してしまいいつもより気配を消すのが杜撰だったみたいで、私がしゃがみこんでいたところの真横に短刀がグサリと刺さった。

あらら、見つかっちゃった。

小太郎ちゃんに、手でごめんと合図すると、小太郎ちゃんはコクリと頷いて私を小脇に抱え、板を蹴り走り始めた。すると先ほどまでいたところに懐刀が刺さる。
豊臣秀吉に仕えている兵士はよほどの手練れらしい。しかしそんなやつに負ける小太郎ちゃんじゃない。すいすいと避けて、あと少しで逃げ切れる…そんなときだった。

目の前に突然、ゆらりと白銀の髪の男が現れた。

「風魔小太郎…だね」

その声に小太郎ちゃんは眉を寄せて、身構える。現れた男も戦闘の構えを見せて、そして、私に目を向けた瞬間…だらりと手をおろし目を瞬かせた。

「君は……!」

男は小太郎ちゃんの存在を忘れたかのように足早に近づいてくる。その目にはもう殺気は浮かんでいない。小太郎ちゃんは私を後ろに隠し守るように立ちふさがった。

「ナマエ、だろう……?」

突然名前を呼ばれ、私は男の顔をじっくり見た。なんとなく、見覚えのある懐かしい顔のような気がした。だけど、誰なのかは全く思い出せない。

「忘れてしまったかい?僕が、君をこの世に産み落としたんだよ」

「え?」

私は驚きのあまり懐に忍ばせ、隙をついて繰り出そうとしていた刀を取り落とした。
小太郎ちゃんは何を考えているのかわからない目をして私を見つめている。私の親だという男が嘘をついているようには見えず、私たちは三人で固まっていた。


BACK



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -