16 与えられた任務

「お呼びでしょうか、秀吉様、父上」

その日私がいたのは大阪城のてっぺん中のてっぺんにある大広間だった。今日もどこにいるのかはわからないけれど小太郎ちゃんの気配は感じる。

「我々だけなのだから、そのように改まらなくてもよい。楽にしなさい」

そう秀吉様が言うけれど、もうここ最近は公の場で会うことが多くなり臣下としての態度が板についてしまっている。
ぎこちなく姿勢を崩す私に、二人は少し寂しそうだった。

そんな時、半兵衛さんは眉を下げて深刻そうに私の手を掴んだ。そして言い放ったのは、

「僕のことを母上と呼んでもいいんだよ」

という斜め上すぎる言葉だった。

天井裏からガタリと何かがコケたような音がした。小太郎ちゃん、心中お察ししすぎて冷や汗が出るよ。

「それで、お、お話とは…」

私の手を掴んでいることで満足したのか私の隣に座り直した半兵衛さんに問いかけると、にこにこと笑った半兵衛さんはかしこまるような話じゃないんだ、と前置きして話し始めた。

話というのは、三成くんと吉継くんの元服、そしてそれに伴って豊臣軍と同盟軍を含む一同を集めた宴会を開きたいということだった。
出会った時にはあんなに小さくてひな鳥みたいだった三成くん(思い出補正が多めにかかっている)が元服だなんて。思わず涙ぐみそうになる私を見て、秀吉様と半兵衛さんが優しい子だ…と全く違うベクトルで涙ぐみ始める。

そしていつの間にか音も立てずに私の後ろに着地したらしい小太郎ちゃんまで頭を撫でて来て、最近は仕事に追われて忘れていたけど私の周りは私に対して過保護すぎることを思い出した。

「そこでだ、元服する二人はナマエにゆかりがあるし、ナマエにそろそろ一仕事任せたいと思っていたところだったから、この一連のことをナマエに取り仕切ってもらいたいと思って」

このことをこんな風に切り出されたこともありこうなることはわかっていたけれど、言葉の割にこれは大仕事であることが容易に予想された。
もし何か粗相でもあれば、豊臣を揺るがしかねない大ごとになる。
もちろん半兵衛さんや秀吉様も助けになってくれる前提で話を持って来てくれているのだろうけど、あのかわいい二人の元服ということもあり責任は重大である。

「承知いたしました。必ずや滞りなく最後まで尽力いたします」

そう力を込めて答えた私に、半兵衛さんはなぜか不満そうだ。

「違うだろう。やり直し」

とまで言い始めた。

「えっ…」

と思わず戸惑った声を上げた私に対し、

「がんばるよパパママ、だろう!」

と南蛮の国から来た商人から覚えたらしい父上母上の呼び方になぜかこだわり始める。

「が、がんばるよ、ぱぱ…まま…」

小太郎ちゃんが慰めるように背中に手を当ててきた。
私の両親(というか、生みの母)はだいぶずれている。


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