14 ふたりの小姓


話を聞いてみると、吉継くん(と呼ぶことにした)は含む小姓たちの間でいけ好かない存在らしい。同じくうとまれている三成くんと二人で普段はいるものの、よくちょっかいを出されては激高する三成くんのストッパーをする役割を担っていたそうだ。

それが今日は度が過ぎてひどい喧嘩となり、通りかかった半兵衛さんが見かねて仲裁し、吉継くんを連れて私の部屋に来た、というのがここまでの経緯だった。

それを折檻のためと勘違いした三成くんが私の部屋に駆け込んで来たのだ。思い込んだら一直線なところはご存知の通りである。

「それで、父上が吉継くんを僕の部屋に連れて来たのはどのようなご用件なのですか」

私がこのカオスな状況でもっともな(本当にごもっともな)質問を投げかけると、半兵衛さんは思い出したかのように言った。

「この吉継はよく見所のある子でね。
できれば将来的に豊臣の軍師として働いてもらいたいと思っている。
そこでだ、ナマエの元につけて色々勉強してもらうのはどうかと思って」

どうかと思って、と言葉はまるで尋ねるような口調なものの、半兵衛さんの中ではもう決定事項なのだろう。
目と鼻と口がそう言っている。ついでに体全体でも。

「異論はございません」

とすぐさま答えた私は、目の端に少し寂しげに見える三成くんを見つけた。

私が吉継くんの名前に聞き覚えがあったのは、三成くんがしきりに彼の話をしていたからだった。小姓の中で唯一と言っていいほど心を開いている吉継くんになかなか会う機会がなくなったら、彼は孤独になってしまうのではないだろうか。

「父上、出来れば三成くんも僕につけていただくことは出来ませんか?」

私がそう言うと、三成くんはパッと顔を上げて途端に明るい表情を浮かべる。半兵衛さんを伺うようにして見つめる三成くんは、やっぱりわんこのようだった。

「君がそれを最良だと考えるのであれば、そうしよう」

その言葉とともに、彼ら二人は私付きの小姓となったのだった。


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