12 ひそかな誓い


平伏し顔をあげた状態で首を傾げる三成くんを手でおいでおいでして、素直に寄って来た三成くんを腕の中に閉じ込める。
わ、と声をあげ身をよじるけれど、私を傷つけないようにおとなしくすっぽり収まる。私より一回りもふたまわりも小さい三成くんをなでなでして抱きしめるのが、私の最近の趣味だ。

「僕は元気だよ、君の顔を見たからね」

すると三成くんはパァァと顔をほころばせて「勿体無いお言葉です…」と顔を赤くするのだ。

しかしこんな可愛い素直な三成くんは、周りからは高慢ちきな嫌なやつに見えるらしい。こうやって朝のひと時を過ごすのも、私に取り入っていると陰口を叩かれる始末。
どうしたものかと悩んでいるのだけれど、打開策はまだ見つかっていない。

「ナマエ様、朝餉の準備が整っております」

女中さんの声に、三成くんの分も用意してと頼み、私は文机に向かった。

また戦があるらしく、半兵衛さんの手が回らないところは私が支えとなっている。今や半兵衛さんは豊臣のすべてを回している状態で、私はなるべくそれを軽減すべく、財政と兵の統率を請け負った。
三成くんになんとなく勘定を教えてみると、それは性に合っているようで良くお手伝いしてくれる。


「いつか、泰平の世が来て…。
誰も誰かを憎むことがないような、そんな日を過ごせたらいいね」

私がポツリとこぼした言葉に、三成くんが顔をあげた気配が、背後でした。

「ナマエ様は…ナマエ様は、それをお望みなのですか?
そのような世が来たら…ナマエ様はお幸せですか?」

必死に言葉を紡ぐ三成くんに、私は振り返って微笑み頷く。

「そうだね、そんな世の中で、秀吉様や父上、僕の大事な人、そして君と笑って過ごせたら、僕はすごく幸せだよ」

私は知らない。
私の背中を、三成くんが決意したように見つめたことを。



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