8 まこと、変なおなご

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「大谷さん、お茶入りました」

ソファの前にあるちゃぶ台に湯呑みをおいて、私は大谷さんの前の床に座った。大谷さんは湯呑みを持ち上げたけど、口をつけようとしない。

「あれ、熱いですか?氷いれます?」
「我が口をつけたらこの湯呑みは使えなくなるであろ。かようなものでなく、もっと他のものを…」

大谷さんに渡したのは、一人暮らしをする際にお母さんが渡してくれた、ちょっとお高めな湯のみだった。大谷さんはそれを気にしてくれているらしい。

「あのですね、大谷さん」

私は大谷さんの手から湯呑みを取り、ひとまず机におく。そしてそのまま手を握る。大谷さんはビクッとして手を引こうとするけど、私はぎゅっと掴んだ。

「大谷さんのこの病は、なかなか人にうつらないものなんです。一緒に暮らしていても、うつる可能性は極めて低いらしいし、健康にしていればそもそも発症しないと聞いたことがあります。そんなものを恐れて、あなたを差別したり疎んだりは、私はしたくありません。」

包帯がきっちり巻かれた指に自分の指を絡めて、ぎゅーっと握った。目をパチクリさせる大谷さんは至極天使でマジ可愛いけど、今がそんなことをいう場面じゃないってことくらいわかる。ハイ。スイマセン。

「ぬしは、」
「まこと変なおなごって言いたいですか?」

笑い交じりにそう言うと、ふいと顔をそらしてしまう大谷さん。やっべー嫁に欲しい。真顔。

「ね、このお茶なかなかに美味しいですよ。飲んでみて下さい」

湯呑みを差し出すと、遠慮しながらも口をつけてくれる。はあもう天使降臨だわ可愛いわハイ。
げふんげふんしながらも私もお茶を飲み、腰を落ち着けた。

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