正直…うん。可愛い。一生懸命な大谷さんマジ可愛い。
しかし眼がマジだ。この人本気で扉ぶっ壊そうと企んでる。
「あ、あのー…」
「なにか」
「ちょっと輿をおろしてくださいますか?」
大谷さんは渋々と言った感じで輿をその場におろした。えっ、そんなに壁破りたかったんです?
「少しばかり我慢しててくださいね〜」
よいしょ、と、私は大谷さんの膝裏と背中に手を回して、抱き上げる。存外軽いその身体に驚きながらも、落とさないように手の位置などを調節して歩き出そうとした。その瞬間脳天に小さな数珠がゴツっとぶつけられて危うく大谷さんを投げ出してしまいそうになったけど、気力で踏ん張り、しっかりと抱きしめた。
「はい、歩きますよ〜」
邪魔な輿を足で除けて、私はリビングまで大谷さんを運んだ。廊下で何度も数珠に小突かれ…というより殴りつけられたけれど、我慢我慢。
「やれ、なにをしやる!」
そう声をあげて叫ぶ大谷さんをよしよし、となだめて、ソファに丁重におろしてやる。
「あの部屋は狭いので、ここなら体も伸ばせますよ。今お茶用意しますから、飲みながらこれからのこと考えましょう」
「…ぬしは本に、おかしな女子よ」