マインドゲーム
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赤々と燃えあがる戦火に包まれた村の片隅で、想像だけの夢をみていた。ぼうと突っ立っている自分の後ろでは、伊作が村人に囲まれて、戦に巻き込まれた子供に懸命な治療を続けている。

6人で出立した任務の帰途。国の外れにある小さな田舎村が、隣国との戦に巻き込まれて戦場と化しているのを発見したのは留三郎だった。文次郎と長次は止めたが、気付けば小平太と伊作の姿はなく、彼らは僅かな生き残りを求めて既に敵も退いた後の荒れた一角に飛び込むことになる。



「文次郎」

音もなく現れた恋人は、身体が触れ合う程近距離にさも自然に並んだ。互いに視線は、つい半刻前まではのどかな日常が営まれていたであろう荒地に向けられている。

「西の様子は」

「…2人生き残りを見つけた。炎の勢いが収まってから、小平太と長次がこちらに誘導させる。仙蔵は?」

「伊作がいつもの悪い癖を出したからな。六ろの二人も今回ばかりはという意向を呑んだのを受けて、帰還が遅れる旨を伝えに先に学園へ戻った。後で処罰を受けることは必至だろうが、先生方に報告しないわけにもいくまい」

「…そうか。悪いな」

「おまえが謝ることではない」


ふっと次の言葉が途切れると、辺りは火の粉が弾け舞う音に支配された。炎は街の歴史を燃料に、その勢いは留まるところを知らない。

「…西で生き残った2人のうち、ひとりは若い男でな」

「……」

「新妻がまだあそこにいるのだと暴れるものだから、戻って来るのに時間がかかった」

「……」

「炎の中に身を投げようとする前に、小平太が気絶させていた」

「留三郎」

「…なんだ」

「…俺たちは、一体何ができるんだろうな」

こんな時代で己に聞いてみた、一体何が出来るのかを あなたの笑顔が教えてくれたようなそんな気がしたから

「文次郎」

名前を呼ばれて首を捻れば、留三郎は鋭い眼を僅かに細めてこちらを見据えていた。

光を見つけたような痛みに触れられる そう、そんな気がした


とんと肩と肩がぶつけられ、汗に混じり彼の匂いがふわりと鼻を擽る。男と触れ合う個所が次第にじわりと熱を帯びる過程は、何度経験しても心地良い。

「誓いでもたてるか?」

「誓い?」

「俺はおまえ以外には絶対に殺されねぇ。だから、おまえも勝手に死ぬな」

「…どんな誓いだ、バカタレ」

「俺たちはどちらかと問われれば…奪う側、だ。このくらいがちょうどいいだろう?」

「闇に生きるものには相応しい約束、ってことか」

「……ああ」

「確かに…おまえにしては悪くないな」

「一言余計なんだよ、いつも」

留三郎にがしっと足元を蹴られたので、間髪いれずに蹴り返す。途端いつものくだらない喧嘩に発展し、遠くで伊作が「私はおまえたちの手当てをする気はないよ」と嘆く声が聞こえた。

こんな時代で笑い合える日が、一体いつ訪れるのか 交わした約束が胸の奧で鼓動を刻み続けるから

不意に殴り合いが終わったとき、文次郎の瞳に先程の暗い影は消えていた。唇の端をぺろりと舐め取ると、口内に鉄の味が滲む。同じく口元を拭っていた留三郎は、それを見て嬉しそうににんまりと笑っていた。

闇の中 何を探し何を求め 何を得ようとしているのか 

微かな希望を抱き始めた時 その答えも見つかるような そう。そんな気がした


その帰り道。この戦の忍び集団と鉢合わせになり戦闘を強いられることを、まだ彼らは知らない。


人はなぜ失う事を恐れ傷つくのに満たされるような愛を求め合う

淡く儚い夢をこの手に入れる為に永遠の真実さえ壊されてく たとえこの時代が希望を今 拒んでも 

消えない光があると気付かせてくれたのは誰でもなく たった一人 過去も未来も分かち合えるずっと





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