好きだなんて馬鹿みたいだ。だって風丸さんも僕も男の子だもの。そうでしょう?…確かに、風丸さんが僕を呼ぶ度満たされた気分になる。でもそれは…その感情は、

「風丸さーんっ」

「宮坂!またタイム縮んだな!おめでとう」

風丸さんが僕を褒めてくれている、それだけで幸せになれる。

「有難う御座います!あの、今度の日曜日空いてますか?」

「…ま、まだ解らないな」

このあとの崩壊を僕は知らなかったから。


風の噂で、風丸さんに彼女ができたと聞いた。風丸さんにはおめでとう、と言ったけどなんとなくもやもやしたものが心に残った。
それが僕の黒い部分を飲み込む気がしたから閉じ込めておいた。怖かった。
それから風丸さんは休日の練習を度々休むようになった。彼女といるのだと聞いた。あのもやもやが、ちくりと僕を刺した。
会えない日が、何日もつづいた。僕が風丸さんを思う度、ちくちくと心が痛くなった。

それで、僕はやっと認めたんだ。このもやもやは恋心で、僕は風丸さんが好きなんだと。

認めてからは早かった。気持ちの整理も、感情の制御も。
認めたことで、僕の中の何かが成長した気もした。
またひとつ、進めた。

先日、風丸さんは部活をやめた。学校も休んだ。先輩が言うには、彼女と駆け落ちしたらしい。

僕の、黒く濁った恋心が心を蝕む音が聞こえた。

馬鹿みたいだ、
僕は一人で何をやってるんだ。