風丸さんの唇が動き言葉を紡ぐ。僕はその秀麗な唇に淡い期待を持つ。それが僕の名を呼ぶことはもう無いだろうと解っているのに。だってきっとまたあいつの名を呼ぶ。
それ以上見たくないから逃げるようにして家に帰り部屋に転がり込む。最近の風丸さんはサッカーに入り浸っている。僕と一緒に走ったことなんて忘れてしまったのではないか僕なんか忘れたんじゃないかと不安になるのも無理はないんじゃないか。だって風丸さんはいつもあの幼馴染みと一緒にいるから。
最近の僕はご飯を食べられない。風丸さんがあいつの事ばかり思っているのだと考えると吐き気がするから。吐き気がする。あんな奴のせいで。
でも本当に風丸さんはあいつの事ばかりだ。ねぇ風丸さん僕のことはどう思っているの。もう僕はどうでもいいの。
そう考えてはまた疵を増やす。それが風丸さんへの愛の証。いつか届く僕の叫び。届いて。届いて。
風丸さんは僕の生き甲斐でもあるから。学校ですれ違った時だって僕に微笑みかけてくれる風丸さんは。僕の。
でも実際これだけ思っても届くことはないという事これが現実事実リアル。逃げなくちゃ。
風丸さんは本当はきっと僕を思ってるから本当はあいつの事なんかどうでもいいんだ。
僕を僕が必要なんだよきっときっときっと。ねぇ風丸さん今すぐ会いに来てくださいよ。僕のことが大切なら会いに来てくださいよ。
これは妄想なんかじゃないこっちが本当なんだ。あっちのあいつしか考えない風丸さんは偽物なの。そうだ。僕は本物しか要らない。
風丸さん僕はこっちで暮らしますねずっと一緒ですね嬉しいですあははは。僕幸せで死んじゃいそうです。こうすれば良かったんですね。なんだ、


僕は初めから、