「か、風丸さん!」

「…こんどはなんだ」

「あ…、あめが、せせせ蝉を食べてるんですうう!」
ま  た  か  。

昨日猫が来てから、宮坂はなにかと俺を呼び出す。俺が昔猫を飼っていたのを誰かから聞いたようだ。円堂…は話さないだろうし(宮坂が話しかけないだろう)、やっぱり真刃か。あいつは俺がその猫のせいで動物が嫌いになった事も話したのか?…いや、この様子じゃ話してないか。くそっなんで俺が…!

「ん…?あめ?」

「はい…"あめ"です、この子の名前!」
嬉々として抱いているのは猫…いや、あめで口にあまり直視出来ないものをくわえていた。

「宮坂…とりあえずわかったから、蝉…」

「そうなんです!僕、後始末どうしても出来なくて…」
そういえば宮坂は前から虫が苦手だったはず。全く可愛いもんだな…いや、俺も苦手なんだが。
「ままま真刃あああああ!!!!!」
疾風の如く携帯を開き、真刃に電話を掛ける。

『んあ、今お前んち行くとこだぜー。猫とお前ら宛に刺身あるからな!』

「いいから早く来てくれええええええ!!!!!」
宮坂に二度とこんなとこは見せられないな、と思った。男らしく居たいしな、一応。
とりあえず真刃の到着を待つことしか今の俺に出来ることはない。
「…宮坂、猫を降ろすんだ」

「猫じゃありません、あめです!」
宮坂はしぶしぶ猫を降ろしてこっちへと来たが、その間にも猫は蝉をぐしゃぐしゃと喰う。ああなんて酷い光景…

「来たぞー、」
なにやってんだよ、と玄関から声がして、まだ少し人見知りの猫はソファーの下へと潜り込む。食べ滓と無惨な残骸だけ残して。
なにもしらない真刃はいつものように部屋に入り、あろうことか猫の食べ滓を踏みつけた。

「うわ、なんだこれ…風丸、ティッシュ取って」

うわー、踏んじまったよ、なんて悪態をつきながらも簡単に蝉を掴んでゴミ箱へと放り投げる真刃が漢に見えたのは言わないでおく。

「…助かったよ、真刃。飲み物持ってくる」

「え…もしかしてこれだけ?」

「そうです、助かりました!」

宮坂と真刃が話している横で、最近真刃に助けられてばかりだと思った。
仕方ないか。