今日も風丸さんはサッカー部のキャプテンと話している。
二人が幼なじみなのはずっと前から知っていたことで、幼なじみ以上なのも皆が知っている事だった。
出来るなら、いつも立ち位置を変わってほしいと思うほど、あの二人は想いあっていたから。

一緒に笑って、いつも寄り添って、お互いに想い合っている二人は誰がみても幸せな関係で、風丸さんが僕の想いに気付かないのも当たり前だった。
でもきっと僕だって円堂さん位風丸さんを想ってる、なんて考えるのは何も今だけって訳じゃない。
初めて風丸さんに会ったとき。その時にはもう既にこの恋愛感情があった気がする。

「君は…入部希望者かな?ならこっちだよ、おいで」
そう言って微笑みかけてくれた風丸さんの顔も仕草も、未だに脳裏に焼き付いて離れない。
あのとき、風丸さんがサッカー部に行くことを知っていたら入らなかっただろう。そのくらい好きなんだ。僕だって風丸さんと笑って、寄り添って、想い合いたい。もしそれが出来るなら、それほどの至福はないだろう、と思う。
でも風丸さんの心はいつだってあの人が支配していたから、僕の立ち入る隙なんか勿論無くて。
そんなことわかっていたはず、いやわかっていたつもりだったのに改めて思い知らされて涙を流す。
どうして、なんて愚問すぎる。わかっていても止められず、それが又涙を溢れさせると解らずに無駄な自問自答を繰り返しては、「辛い」「悲しい」「苦しい」なんて、僕には並べる資格のない言葉ばかりが頭に浮かび、コントロールが効かなくなる。
これが恋愛ならば、僕は心底恋愛に酔っているんだと思う。

今日も僕は、
あの人を想う貴方を想って涙を流す。