「風丸さん、あーん」
そういって水色のゼリー状のものを近付けてくる宮坂の笑顔は本当に天使のようで思わず頬が緩む。じゃなくて。

「…宮坂、それ、」
意味がわからない。ゼリー、ではないようだ。不透明だし。たまに鼻を掠めるスパイシーな香りが、更にそれの不審さを高める。…香りが山葵みたいだ。

「…やっぱり、変ですか…?」
「今日の授業で作ったんです。一番に風丸さんに食べてほしくて…」
少し頬を染めながら、しかし寂しそうな顔をして俯いた宮坂は狡いと思う。食べるしかないじゃないか。

「勿論食べるけど…何を作ったんだ?」

「あ、えっと、プリンです!」

「なるほどな、……!?」
満面の笑みで答えた宮坂は素晴らしく可愛いが、そんなことには構ってられない。…プリン、とはこんなだったか。
どうぞ、とはにかみながら差し出してくるスプーンを口に含む。
あ、見た目の割には結構…

「美味しい、」
刹那、宮坂の顔が輝く。

「良かったぁ!」
全く宮坂は可愛いなぁ。続けて二口、三口と口へ運ぶと、急激な眠気に誘われる。

「風丸さん…!?」
かしゃん、とスプーンを落としてしまい、宮坂が目を白黒させて俺の顔を見上げる。

「宮坂…ごめ…」
すっかり熟睡した俺が目覚めた時には、それから30分たっていた。

俺の恋人は、
料理が下手です