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凛とした校長の声がしたと思うと、ファーストは壇上に躍り出た。確かにそれはキングズクロスで見たファーストであったというのにどこか違う人のように思えて、何度か目を瞬いた。ローブや制服に身を包んでいるからなのかもしれないが。胸元に締められたネクタイはノーカラーでそれがどの色に染まるかも見物だが、きっと彼女はスリザリンだろう。決まっている。組み分けなんて時間の無駄ではないか、そう結論付けてまたも壇上に意識を集中させた。
スツールに腰掛けたファーストは当たり前だが、先ほどまでの新入生と比べたら大人で纏っている雰囲気も違っていた。その気品に惹き付けられる人間が何人いるだろう。


「彼女、どこの寮だろうな」
「スリザリンに決まってる」


組み分け帽子が思案している隙にと隣に座る同級生のアレハンドロロドリゲスが発言した。黙れと叱咤したかったが、それよりも先に僕の口は動いていた。


「何?ブラックの知り合い?」
「まあそんなところ」


口を動かしながらも視線は壇上に。しかし、彼女と組み分け帽子は会話でもしているのか一向に帽子の玲瓏な声は聞こえてこなかった。まさか彼女がスリザリン以外の寮に所属するとは考えられない。ましてやグリフィンドールにだなんてそんなことあってはならない。それこそ万死に値するというものだ。グリフィンドールともしも、もしも告げられたら…そう考えると心臓がぎゅっと苦しくなって、思わず前かがみになった。隣のアレハンドロロドリゲスの不安げな声が通り抜けていく。もしもそんなことになってしまったら、そう考えれば考えるほど兄さんの存在が頭を支配した。
えへん、とわざとらしい堰は組み分け帽子のもので痛む心臓をぎゅっと掴むように身体を震わせて顔を壇上に向けた。ファーストがこちらを見ていて、視線がかち合ったような気がした。いやかち合っていた。


「スリザリン!」


そして彼女は微笑んだ。僕にだと、そう自惚れてもいいだろうか。



10.11.23

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