iP | ナノ


もしも時間を巻き戻す事が出来たなら僕はきっとあの日に戻って、あなたに手を差し伸べていただろう。そしてこう言うんだ…


「僕と踊っていただけますか…?」


と。


ファーストファミリー、二つ年上の名家の所謂お嬢様。両親共々スリザリンの血筋の為か出会う機会は幼少の頃からよくあった。
僕と兄さんとファースト、それは微笑ましい光景だっただろう。珍しく僕らの両親が目を細めていたぐらいなのだから。


「ねぇファーストは大きくなったら何になりたい?」
「私?私はね…」


二人のお嫁さんだよ。幼い頃の僕の心臓に衝撃を与えるには十分で、僕はその頃からファーストばかり目で追うようになっていった。


そんなファーストが僕の前に姿を現さなくなったのは、ちょうど兄さんがホグワーツに入学が決まった頃だった。僕はてっきり二人がホグワーツに通って、スリザリン寮に属すると思っていたから拍子抜けしたのを覚えている。そして僕は折を見て両親に問うのだった。


「ファミリー家のファースト、さんは最近とんとお目にかからないですね」


すると両親は朗らかに言うのだった。
あぁ、ファーストさんならダームストラングに通うことになったのだ…と。ファミリー家は確かに濃いスリザリンの血筋で闇の魔術を、あの人を崇拝していた。そんなファミリー家の人間が闇の魔術に力を入れるダームストラングに通うのは不思議ではなかったし、我が身の如く両親が嬉しそうに言うのも頷けた。両親も闇に取り憑かれているのだから、同志が喜ばしいのは純粋に嬉しいのだろう。かのゲラートグリンデルバルドもダームストラングの出身で、闇を学ぶには最適だ。
しかしその反面で、僕はあの人には闇に染まって欲しくないとも祈った。
僕は矛盾してるな、と自身を嘲笑した。

そんなファーストと再会するのは湿り気を帯びた夏。
僕の14の夏。
実に5年振り再会だった。


10.9.1

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -