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ゆっくりと歩を進め壇上からスリザリンのテーブルに向かうファーストと鳴り止まない歓迎の拍手。ファミリー家の人間をスリザリンで知らない方が稀だ。彼女の家はそれほどにあの人に闇に傾倒しているといえる。拍手の大きさがそれを物語っていた。
名家の子女を取られ不服そうなレイブンクローやハッフルパフの方に目をやると、視界の端に兄さんが映った。ぽかんとした間抜け面を見る限り兄さんはファーストの事を知らなかったようだ。それもそのはず兄さんは夏休みに一度もブラック家に帰って来なかったのだから。父上も母上も知らせてなどいないのだろう。
隣にいたアレハンドロロドリゲスは急にぎゅうぎゅうと席を詰めてきたものだから、苦しくなって睨み付けたがそれは効果がなかったようだ。いつの間にかアレハンドロロドリゲスの向こうにファーストがちょこん座っていた。


「おいロドリゲスアレ…」


言い掛けた刹那、校長の挨拶が終わりパチンという合図と同時にワッとテーブルに様々な料理が湧いた。アレハンドロロドリゲスは料理を取り分けながらも隣に座るファーストに夢中のようだった。なんだか胸中穏やかではない。
もやもやするそんな気持ちをかぼちゃジュースで流し込む。そしてシェパーズパイに手を伸ばした。食に没頭することで、隣を気にしないようにした。時々振られる「なぁブラック?」という言葉には適当に相槌を返した。

食事が粗方終わるとそれぞれの寮の新入生をそれぞれの寮の監督生が引率してそれぞれの寮に戻る。双方に当てはまらない生徒は思い思いに食事が終わったところで席を立った。僕もその内に1人で、隣には目もくれずに立ち上がった。図書館にでも寄って帰ろうかとふと考えたところで呼び止められる。


「レギュラス」


僕はこの声をよく知っている。聞き間違えるはずがない。


「何か?」


思ったよりも冷たい声音が飛び出した。


「なんだよつれねーな」


シリウスブラック、僕の兄さんは相変わらずの飄々とした雰囲気を纏って大広間の入り口にもたれ掛かってこちらを見ていた。いつものメンバーは居ないところを見ると、兄さんは一人待っていたようだ。


「ファースト、本当に転入してきたんだな」
「何を知ったような…」
「アルファード叔父に聞いた」
「…」
「あいつがスリザリンなのは残念だが、楽しくなりそうだ」


兄さんはにやりと笑うと踵を返した。相変わらずの掴めないその性格に僕は奥歯をぎしりと噛み合わせた。



10.12.03

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