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※ブラック家姉設定



歳の離れた姉様がいる。姉様は帰宅する度に、僕にこっそりとお土産と称してお菓子をくれる。それは母上や兄さんも知らない僕と姉様だけの甘美な秘密。


「お帰りなさい姉様」


六学年と最終学年に近付きつつある姉様は誰が見ても立派な魔女だった。それはまだホグワーツにすら入学していない僕らから見ても明らかだった。クリスマス休暇も勉強で忙しいだろうに、姉様は毎年必ず帰って来てくれるのだ。


「あの、姉様」
「ん?」


おずおずと後ろ手にしたクリスマスカードを差し出そうとした時、それは第三者によって阻まれた。父上と母上は今、今夜行われるブラック家主催のクリスマスパーティーの準備に追われている…ということはこの場合の第三者に該当する人物は1人しかいない。


「シリウス!」
「兄さん!」


姉様と言葉が被った。兄さんはニヤニヤ笑いながら間に割って入ってくる。


「元気そうねシリウス」
「ん」
「レギュラスを虐めたりしてない?」
「してねーよ」
「当たり前よね、そんなこと私が許さないんだもの」


くすり、と笑った姉様に昨日おやつのミンスパイを横取りされたことを告げ口しようかと思った。
けれど兄さんは2、3言葉を交わすとくるりと踵を返していなくなった。きっと自室だろう。今は庭も白化粧を施し、寒いの一言に尽きる。きっと今が新緑の季節ならばきっと兄さんは庭の樫の木の下で昼寝に勤しんでいるだろう、とちらりと窓から見える庭を横目に考え入る。


「そういえばレギュラス?さっきあなたは何を言い掛けたの?」
「あ、あ、いえ何でもない…です」
「嘘、レギュラスがそう言う時は決まって何かあるのよ」


流石姉様、叶わないとただただ思った。


「あの、勉強を見てくれませんか?」
「えぇ、良いわよ」


本当はクリスマスカードを渡したかったのに、僕はいつからこんなにも嘘を吐くのが上手くなったのだろう。狡猾さが認められれば姉様と同寮になれるのは嬉しいけれど。


「先に部屋に行っていて?後から行くから」
「はい」


階段をたんたんと駆け上がって自室に向かう姉様を視線で追い掛けて、ぱたんという音を耳にして自分も部屋に入る。緑と銀で統一された内装はまさにスリザリンを象っていた。しばらくすると控えめなノックが聞こえて、短く返事を返す。


「お待たせ」
「だい、じょうぶです」
「先にレギュラスにこれ渡しておくね」
「これは?」
「お土産」


ホグズミードのだと思わと自然に胸が高鳴った。ガサガサと包みを開けると色とりどりの菓子が溢れた。


「シリウスには内緒よ」
「はい」


自然と頬が温かくなる。何で兄さんには内緒なの?と昔聞いたことがあった、その時姉様はシリウスが知ったら悔しがるじゃない、とあやふやな答えを聞かせてくれた。一度クリーチャーに聞かせたことがある。その時クリーチャーは、firstお嬢様はレギュラス坊ちゃまのことを可愛がっておいでなのです、とまたよく分からない返事をした。


「姉様…」
「なぁに」
「ありがとうございます」
「うん」


ふわっと微笑んだ姉様は綺麗だ。卒業と同時に嫁に行くだなんて考えられない。誰かのものになるなんて考えられない。


「さ、勉強を始めましょうか」
「あっ姉様…あの、これ」


さっき後ろのポケットに強引に詰め込んだカードを取り出した。少し折れ曲がってしまっている。


「レギュラスが作ってくれたの?」
「はい」


姉様は目を細めて、僕の作ったカードを見つめた。とても嬉しそうでその姿を見るだけで胸がいっぱいになる。


「ありがとう」
「いえ」
「本当は勉強じゃなくてこれを渡したかったんでしょう?」


嗚呼、僕はきっと姉様に一生かなわない。




10.6.1
クリスマス時点で、
姉16、兄9、レギュラス8
ぐらいかな。
シリウスが入学する頃、姉卒業…みたいなが理想。

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