「僕がレギュラス、でそっちが馬鹿兄のシリウス」
「……嘘」
信じられないと、それ以外の言葉は今この場には相応しくない。
「あとは頼んだから」
ひらひらと手を振って部屋から出ていくレギュラスもといシリウス。レギュラスの部屋のレギュラスのベッド、それはスリザリンカラーに染められていてそこに腰掛けるシリウスなんて多分一生見られないぐらい貴重なショット。
「…まさかまたポリジュース薬?」
「分からない。朝起きたらこうなってた」
小さい頃に一度体験したことを思い出す。それも苦々しい記憶。
夏休み中だったのが不幸中の幸いかもしれない。シリウスの姿をしたレギュラスはやれやれと肩をすくめた。
「えーっとつまりレギュラスは思い当たる節がないんだね」
「当たり前。十中十は馬鹿兄の所為」
「十中十ってそれ100パーセントの確率でシリウスじゃん」
もう有り得ない、とレギュラスは呟いてベッドに倒れ込んだ。
私はそっと倒れ込んだレギュラスのそばに腰掛けた。
「今日のデートは?」
「?何ソレ」
「ダイアゴン横丁!買い物に付き合うって言った!」
「…そうだっけ?」
シリウスの姿でそう言われると、何故だか無性に苛立ちを感じた。そしてずいっと自身の両腕でシリウスの体を挟むようにして詰め寄った。
「ちょっ…近い、first!」
「行くって言った!」
「この体で、いい訳?」
「それは…仕方ないじゃない…そうなっちゃったんだもん」
ぷいと顔を背けるシリウスは、顔が赤い。これもまた珍しいショットだ。中身が違うだけでこうも違う表情が垣間見えるのかと、内心ワクワクした。
「ちょっとfirst、聞いてる…?」
「…あっごめん、何?」
「今の僕とキス出来るの?」
「えっ!?」
だってデート、でしょ?するかしないかで言ったらする確率の方が高いんじゃない?だって恋人同士でしょ?とシリウスの姿をしたレギュラスはしれっと言って退けた。その強気の発言は体の持ち主に近しいものだった。
「き、キス…」
「そう、出来るの?出来ないの?」
「…中身はレギュラスだけど外見はシリウス…」
自分に言い聞かせるようにぽつりと呟く。すると、シリウスの手が伸びてきて、ベッドに腰掛けた私の服を引っ張った。それを認識し終えた頃には、私は力強いそれに手前に倒れていた。
「な、何…?」
「試してみる?僕と出来るかどうか」
ベッドにお互い倒れ込んで同じ目線。距離も近い。
「first」
「ちょ、ちょっと待ってシリウス…いやレギュラス!」
「待てない。はっきりさせて?」
そこでフェードアウト。
「っていう夢を見たのよレギュラス」
「何だそれ」
冷たく突き刺さるレギュラスの視線に、顔を背ける。なおも身体に突き刺さる視線が痛い。
「と、とにかく夢何だからいいじゃない!」
「っていうか今、その状況」
「え?」
「俺はレギュラスじゃなくてシリウス。気付けよ」
「シリウスなの?」
確かにニヒルな笑みを浮かべるその姿はシリウスと被るところがあって、現実と夢とが混同されていく。シリウスがレギュラスで、レギュラスがシリウスで。
「え、えーっと…デジャヴ?ほんとに?」
言われてみれば、シリウスかもしれない。2人は兄弟ということも合ってか似ている。
「…なんてね」
「え」
そして翻弄されていく。
10.12.13
詩夏さんリクエスト
レギュラスでエイプリルフールネタ。