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冬の空は暗くなるのが早い。だからといって部活動の終了時間が早まるということはなく、私は教室で同じ境遇の友人と話をしていた。同じ境遇とはこの場合、部活動に勤しむ彼氏を待つ彼女のことを言う。友達との会話の最中もやはり目は黒板の上に位置する時計に目がいってしまう。いつもの約束の時間までもうすぐ。逸る気持ちもあってか少し疎かになりつつある会話に申し訳なさを感じる。


「そろそろじゃない?」
「っえ?」
「彼氏」
「あ…うん」


時計の長針は8を指していた。待ち合わせに間に合うように長針が9になったら行こうと思っていたのに先手を打たれたようだ。


「私が気付かないと思った?時計気にしてるのなんかバレバレ」
「そ…そうかな?ごめん」
「いいって、いいって。ほら行ってきな。私ももうすぐだからさ」
「うん」


カタンと座っていた席を立ち、制服の上にコートを羽織る。そして深いモスグリーンのマフラーを首に巻く。


「気を付けてねー。彼氏によろしく」
「うん、ありがと。また明日」


バイバイと手を振る友人に同じように手を振り返す。そして私はひんやりと人気の無い廊下を走った。その行為を咎める人間はいない。下駄箱でローファーに履き替えると、玄関口に見知った顔を見つけて少し乱雑に上履きを仕舞い駆け出した。


「…レギュラス!」


薄暗くなってきた中でも、その姿はしっかりと確認出来た。くるっと振り返ったレギュラスは部活の後だというのに何一つ乱れはなかったのに驚いた。


「ごめんね。寒かったよねどれぐらい待った?」
「今来たとこ」
「嘘」


だって冷たくなってるじゃん、そっと手でレギュラスの頬を包むとひんやりとした。目を丸くするレギュラスに続けた。


「それにマフラーはいいけど手袋は?」
「忘れた。そっちこそ」
「私はいいのカイロがあるから」


コートのポケットに入りっ放しだった発熱するカイロをチラリと見せた。


「僕もあるから」
「あっそうなの?」
「ほら」


ぐいっと右手を引かれるとそのまま私の右手はレギュラスに繋がれたまま彼のコートの左ポケットに吸い込まれていった。意外にも彼のポケットは温かかった。同時に心がじんと温まるのを感じて涙腺が緩んだ。悲しいわけじゃないのに不思議だ。


「帰ろう。あ、そうだ…帰り本屋寄っていい?」
「い、いいけどさぁ…これ危なくない?どっちかが転けたら共倒れじゃない?」
「何?嫌なの?」
「嫌じゃないけど」
「ならいいじゃないか…それに僕は転けない」
「私が躓いて転けたら?」


レギュラスはチラリと私を見るとくすりと笑みを浮かべて言った。


「咄嗟に手を離すから大丈夫」
「レギュラスが大丈夫でも私が大丈夫じゃない!」
「ちゃんと助けるから」


くすくす笑うレギュラスを見たのはなんだか久しぶりで、少し腑に落ちない気がしたが流すことにした。


「レギュラスの手あったかいね」
「そう?普通だよ」


ポケットの中で温まる手と手がぎゅっと強く握られた。



10.11.17
葵さんリクエスト
レギュラス学パロで冬、一緒に下校。

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