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無意識に、気が付いたら僕の視界にいるあいつ。
年上でスリザリンらしくなくて、お節介で、僕をすぐ子供扱いする…でも多分一生掛かってもかなわない相手。


「ねぇドラコ。ハロウィンパーティー一緒に行きましょうよ」
「僕が覚えていたらな」
「絶対よ!約束なんだから」


ゴロゴロと猫のように寄ってくるパンジーパーキンソンを適当にあしらって、じっとなまえを見る。別に睨んでる訳ではない。現になまえはこちらに気付くと全く臆することなくひらひらと手を振って見せた。
僕はそれを確認するや否やパッと顔を背ける。そしてそれを見たパンジーパーキンソンは不思議そうに僕に声を掛けるのだ。


「ねぇドラコとなまえ御姉様とは従兄弟同士なのよね?」
「はぁ?御姉様!?」
「何を驚いているの?なまえブラック御姉様のことよ」


あいつが御姉様?まさか!何かの間違いじゃないのか。何をさせてもそつなくこなす様は確かに尊敬に値するが、御姉様?まさか。確かにブラック家の血をひく由緒正しい身分ではあるが、あいつが御姉様?何だかしっくりこない。あんなグリフィンドールにも馴れ馴れしく接するようなやつが…。
「ねえどうなの?」
「五月蝿いな、どうだっていいだろうそんなこと」


ぷいっとそっぽを向いて乱暴に立ち上がった。パンジーパーキンソンのブーイングも聞こえない振りをして、なまえの横をすたすたと通り過ぎ寮に戻る。いつもならここであいつの声が掛かる筈なのだが、僕の予想に反してなまえは友達との話に花を咲かせていた。


「…何なんだ一体」


ポツリと呟いた言葉は誰にも聞こえずに消えていった。


次の日僕は驚くようなニュースに遭遇する。


「なまえが寝込んでるだと?」
「うん、医務室に居るんだって」
「へぇ?あいつも病気になったりするんだな」
「風邪らしいけど」
「ふ〜ん?分かった、もう行っていいぞ」


クラッブの後ろ姿を見つつ僕は顎に手をやり、思案した。


「あいつも弱ったりするんだな」


別に弱みに漬け込むとかそう言った類のことではないが、僕はその日1日授業がうまく手につかなかった。そして誰よりも早く夕食を済ませ、まだ慣れないホグワーツ校内の医務室に向かった。予定よりも大幅に時間がかかってしまったが、無事にたどり着いたそこにある重々しい扉を押した。
都合が良く沢山ベッドがある中、一カ所だけカーテンが閉まっていた。ランプが煌々と光っていて、もぞもぞ動く人影を確認した。そして僕はいきおいよくカーテンを開けた。


「おいっ!」
「わ、なんだドラコか」
「…え?」


はだけられたブラウスがベッド上に放り出されていて、なまえは上半身下着姿のままタオルで体を拭いていた。
咄嗟にカーテンを閉めるも一点に集中した熱は冷めそうにない。


「どうしたんだいドラコ」
「べ、べ、別に!」


なまえは咎めることもなくいつもの声色でカーテン越しに話し掛けてきた。それがものすごく居心地が悪い。


「お見舞いに来てくれたのかな?」
「お前でも弱ったりするんだな」
「ドラコには私がどんな風に映っているのかな?私はただのしがない女の子だよ」


女の子、さっきの姿がフラッシュバックしてまた更に熱くなった気がした。


「でもこの通りもう元気だよ」
「そうみたいだ」
「マダムポンフリーの薬はよく効く。でも今日は医務室から出られないようだ」
「そうか」
「来てくれて嬉しかったよ。見苦しい所を見せてしまったね、すまない」


何故なまえが謝る?なまえは何も悪くないじゃないか。何も。


「っ何で!お前ってやつは…!」


それ以上言葉は続かなくて、僕は医務室から駆け出した。



10.4.12
(10.4.13up)

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