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今日僕はスリザリンの談話室でクラッブやゴイルと作戦会議を繰り広げていた。最近ポッターやウィーズリー達の動きが怪しい、何よりポッターは生意気だ、という話。談話室の端にあるこじんまりとした場所にあるソファを陣取った。この場所からは薄暗いスリザリンの談話室を望めた。なまえ率いる上級生はいつもと同じ場所で談笑し合っていた。


「なぁドラコ」
「五月蝿い!黙れクラッブ」


僕が考え事をしているというのにぬけぬけと喋るクラッブを叱責した。その声に気付いたのかなまえは足取り軽く僕らが座るソファへとやってきた。


「やあドラコご機嫌ななめかな?」
「五月蝿い!」


僕が声を荒げてもなまえは笑みを浮かべたままで、クラッブやゴイルに話掛けていた。するとなまえは杖を取り出し短く呪文を唱えるとティーセットを呼び寄せた。


「ドラコスコーンはいかが?」
「別に」
「クリームを塗ると美味しいよ?」


そう言い、皿にふわふわのクリームがたっぷり乗ったスコーンと紅茶が並べられた。クラッブやゴイル達は嬉しそうに頬にクリームを付けながら頬張っていた。食い意地の張った奴め。


「そういえば知っているかい?グリフィンドールの新しいシーカーはハリーポッターらしいね」


ピシリと空気に亀裂が入った。クラッブやゴイルも黙りこくってチラチラと僕に視線を送る。その行動が癇に障る、イライラする。


「頑張れば来年はドラコもシーカーになれるかも知れないよ?飛行術上手なんだろ?」
「…」
「私も選手に憧れたんだけどね、飛行術はてんで駄目でさ。1年生でシーカーだなんて…」
「五月蝿い!黙れ!もうたくさんだ!僕に構わないでくれ!」


フラストレーションに任せて言葉を言い切った後、はっとした。
でも謝ることなんて出来なくて、僕は談話室を飛び出した。同時にクラッブやゴイルも付いて来たが、そんなのには構ってられず僕は後ろを振り返らずに走った。
今どこにいるだとか、どこに向かってるのだとかは関係なかった。


「はあ」


ちらりと後ろを見たが勿論クラッブやゴイルの姿はなく。僕は手近にあったレストルームに入り、洗面所で顔を洗った。


「別に僕は悪くない…あいつが、あいつがいけないんだ」


ばしゃばしゃと洗った後、レストルームを後にした。
そこでふと思考回路が停止する。


「ここは…」


どこだ?我武者羅に、遮二無二走った所為でここがどこか分からない。
せめてもの救いは夕食後であったこと。消灯時間までにはスリザリン寮に戻らなくては、と僕は歩き出した。



10.2.7
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