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初めて乗るホグワーツ特急に少しドキドキしたがコンパートメントのクラッブがゴイル達がいる手前平静を装うことに徹底した。
組み分け帽子は満場一致で僕をスリザリンにした。ちなみにクラッブやゴイルも同じだった。分かりきっていたといっても過言ではない。
初めてのホグワーツは広くて戸惑いそうになったが、その度に平静を装うことに努めた。僕はマルフォイ家の人間なんだ、そう言い聞かせながら。そして顔を上げた僕は愕然とした。先程のざわざわや誘導する監督生は疎か、クラッブやゴイルもいない。はぐれてしまった、とも言う。まだ一度も訪れたことのないスリザリン寮、父上達の話では地下にあるらしい。その情報を頼りに今いるこの場所から地下を目指すことに決め進み出した矢先だった。


「おや、迷子かな?」


ひょっこりと現れたその女のローブの右胸にはPのきらめくバッジがあり、ネクタイは緑と銀で彩られた。


「スリザリン…」
「そうだよ新入生くん。あれ…君どこかで」
「僕は」
「あーちょっと待って思い出すから」


女はそれだけ言うと眉間に皺を寄せて軽く唸った。


「あの…」
「思い出した!ナルシッサ叔母様の息子の!」
「ドラコマルフォイ」
「そう!そうだよ」


覚えてないかな?何度かブラック家のパーティーで会ったのを。あーそうか、そうだドラコだ。ナルシッサ叔母様から手紙が来てたんだよなぁ。
女は早口でまくし立てると僕の手を平然と握った。


「なっ何す…!」
「ほら寮に行くよ、迷子のドラコ」
「別に迷子じゃ」
「いいや立派な迷子だよ君は」


ずんずん迷うことなく進む女に手を引かれながらホグワーツ校内を案内された。この肖像画は謎かけが大好きだとか、ここの階段は決まった時間にいなくなるとか、廊下の甲冑に会釈すると相手も会釈を返すとか色々。
そしてついた地下の談話室の前で繋がれた手が離れた。途端に温かさが減っていく。


「ほら、ついた。もう迷子になっちゃダメだぞ」
「あの…名前」
「え?」
「名前聞いてない」
「あぁ、君の名前は知っているのに私の名前を明かさないのはフェアじゃないね」


なまえブラックだよ、よろしくねドラコ。
そして談話室に続くドアをくぐった。



10.1.22
(10.1.27)
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