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最近なまえが素っ気ない。というか以前に比べると格段に話す回数も顔を会わせる回数も減った。それは俺の思い込みではなくて、ジェームズやリーマス…ピーターにさえ声を掛けられる始末。


「ねぇシリウス、本当に君はなまえに何もしてないんだね?」
「してねぇ」
「なら無意識か」
「無意識でもねぇよ」


誰もいない談話室のソファに寝転がり、リーマスとチェスを繰り広げるジェームズに気怠げに言葉を投げかけた。リーマスがポーンを進ませると同時に口を開いた。


「もしかして」


邪魔するように現れた赤い髪にジェームズは興奮した。


「なまえは悩んでいるのよ、ブラックの所為で!」


ソファを空けなさいよと無言の重圧に対抗する術はなく、渋々スペースを作った。すとんとエヴァンズが腰掛けたと同時にジェームズもやって来た。その様子に優勢だったリーマスが非難の声を上げた。


「どういうことだいリリー」
「馴れ馴れしく名前で呼ばないでちょうだいポッター」


始まる痴話喧嘩を咳払いをして静め、エヴァンズに先ほどの話を促した。


「つまりブラックが最近なまえの周りをちょろちょろするからいけないのよ」
「なんでだよ」
「誤解されたくないのなまえは」
「は?」
「だから!ブラックがなまえのボーイフレンドって誤解されたくないのよ」


ズバッと言い放つとエヴァンズは談話室を出て行った。きっと他の生徒同様大広間に向かったのだろう。


「お、おいシリウス…大丈夫かい?」


俺はジェームズのその言葉には耳を傾けず、ゆらゆらと男子寮に戻った。
足取りが重い。



10.1.22
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