kind | ナノ




授業中にパタパタと可愛らしく折られた蝶は、切り取られた羊皮紙のメモでなまえから届いたものだった。


「誰から?」
「なまえ」


途端ジェームズの目が輝いたのが分かった。分かりやすいヤツ。


「なんてなんて?」
「急かすな、今読む」


静かな教室内に出来るだけ教師に気付かれないようにメモを盗み見た。内容は昨日のお礼がしたいということ。
ちなみに昨日の出来事はジェームズには話していない。


「で、どうなんだい相棒」
「あー、その…なんだ」
「ん?」
「今度一緒に勉強しませんかだと」
「へー、意外となまえって積極的なんだね!なまえの方から告白してきたりね」


ジェームズは自分事のように喜び、気持ちを弾ませた。ジェームズはその後、授業中終始ニコニコしていた。少し悪いことをしたような気もした。


「いいねー青春って感じするね」
「そうか?」
「余裕ですねーシリウスさん」
「へーへー」


授業が終了してから、ジェームズに断りを入れて扉から押し寄せる生徒の中からなまえを見つけた。

「あ、シリウス」
「よ、よぅ」


声を掛ける前にあちらから俺に気付き声を上げた。


「さっきの手紙読んでくれた?」
「あぁもちろん」
「本当にありがとうシリウス、あの時計は入学する時にパパに貰ったものなの」
「そうか、もうなくすなよ」
「うん!それであの、私に何か出来ることない?」


言葉に詰まった。何か出来ることはないかなんて聞かれると思ってなかった。俺のガールフレンドになってくれないか、なんて浮ついた考えを浮かべた頭を左右に振った。


「あの、シリウス?」
「そ、そうだな…えっと」
「急に言われても困るよね」
「そ、うだな」
「じゃあまた改めて、だね」


ふわりと笑うとなまえは友人らと共に消えた。突然のことに戸惑いを覚える。
俺はなまえに何を願う?



09.12.14
- ナノ -