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赤をふんだんに使ったグリフィンドール寮は、暗くて陰湿な緑と銀を掲げるブラック家で育った俺にはとても眩しい。
だが、それはとても居心地がよかった。
寮の談話室には疎らではあるが生徒がいた、そのほとんどが上級生のようで俺は自分達の部屋に帰ろうと男子寮に向かった。
その時、所謂運命が訪れた。


「あなた…」
「え?…なまえ?」


窺うように発したその声に反応した人物は間違いなくダイアゴン横丁で出会った人物だった。


「ダイアゴン横丁で会った…」
「あ、ずっと、探してたんだなまえはグリフィンドールだったのか」
「えっと…そう、私まだあなたの名前聞いていないわ」
「え」


俺はダイアゴン横丁での出来事を思い出せる限りを、頭に浮かべ。
俺の思考に間違いがなければ、俺はまだなまえに自己紹介すらしていないことに気付いた。
確かにあの時執拗に名前を聞いた割には自分は答えていないような、そんな記憶が蘇った。


「悪い、今更で…」


名乗った俺になまえはシリウスブラック、と呟いた。
なまえに呼ばれたその名前は不思議と嫌じゃなかった。


「改めてよろしくねシリウス」
「俺、組み分けの時とか新入生歓迎パーティーの時もなまえがいないか探してたんだぜ」
「歓迎パーティーの時は少し具合が悪かったの」
「そうだったのか」


2人での会話は意外にも弾んだ。
ダイアゴン横丁で思ったもっともっと話したい気持ちは今も健在だった。
だが、それはしばし中断される。


「なまえ!」
「あ、ルーシー」


手を振り女子寮からやってきた女生徒をなまえは私の友人だと紹介した。
ブロンドの髪が眩しい。
俺も軽く挨拶を交わした。


「それじゃあ、また夕食で」
「うんまたね、シリウス」


軽く手を振って、見送られる俺は男子寮に戻ろうとなまえ達に背を向けた。
なまえとルーシーの楽しそうな会話が聞こえる。
俺の心の中は今、とても温かかった。


「ねぇなまえは今度のホグズミード行くんでしょ?」
「うん、許可証にパパのサインをしてもらったから」
「楽しみね」


ホグズミード、その単語が聞こえた時俺の足は止まって入学早々マクゴナガルが話していたのを俺は瞬時に思い出した。
休日にホグズミード村に行くには、親のサインがしてある許可証が必要である。
何より、三年次より上記の条件を満たした者のみ外出を許可する、と。


「なまえ…お前三年生なのか?」
「え?うん…」


あれ?知らなかった?となまえはキョトンとした顔で言った。
それを見たルーシーはおかしそうにクスクスと笑った。
ルーシーは俺が知らずになまえと話していたのがおかしかったのだろう。

後に背が小さかったから三年には到底見えなかったと本人に言ったことがある。
その時は確か3日ほど口を聞いてもらえなかった。


ようやく見つけたラピスラズリの君は年上。



09.09.18
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