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本ではなく直に見るホグワーツ特急に軽い感動を覚えた9月1日。
その少しの不安はすぐに払拭された。
ジェームズ達とコンパートメントで知り合ったからだ。これは今となっては運命だった、だなんてこそばゆい言葉で片付けられるかもしれないが本当だった。
これがジェームズ達との運命の出会いだったのならば、先のダイアゴン横丁での俺とFirstの出会いは何だったんだろう。あれこれが正に運命だ、とこっぱずかしい台詞を言ってみるとする。


「なぁジェームズ」
「何だい?」
「ここに来るまでに小柄な女の子を見なかったか?」
「それに当てはまる女の子はごまんといるよ」


ホグワーツ特急に揺られているそんな中のコンパートメントでの会話。
自分たちのこと、親のこと家族のこと、好きなこと、沢山手当たりしだい沢山話した。
そして俺は、話が一区切りした頃にそう切り出した。


「もっと、何か特徴的なことはないのかい?」


ついこの間ダイアゴン横丁で出会ったというのに、うまく言葉が出なくてむず痒い。
ハッとした時にはもうその言葉は口から出ていた。


「ラピスラズリ!」

唸っていた俺がいきなり叫んだもんだからジェームズもリーマスもピーターもみなが目を丸くした。
そして次の瞬間にはコンパートメント内は笑いに包まれた。


「ふーん?ラピスラズリの女の子ねぇ」
「悪いか」
「いいや、悪くはない」


僕はさっき赤くて長い髪の綺麗な女の子を見たけどね!とウキウキ話すジェームズを横目に、俺はこの後の組み分けの儀式で否が応でも分かるだろうと結論付けた。
そしてリーマスが差し出したチョコを口に放り込んだ。


コンパートメントの窓の外は次第に夕闇に染まっていく。
心なしか胸の辺りがドキドキしていた。



09.09.18
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