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必死になって追い掛けたあの青い夏の思い出。






「名前は?」


不躾、それはブラック家にあってはならないもの。
無作法、これもブラック家にあってはならないもの。
でもどちらもブラック家であって俺には関係ないもの。

父親と母親の目を盗んでダイアゴン横丁を駆け抜けた。
今年入学するホグワーツ、その準備の為にきたダイアゴン横丁。


「お前、名前は?」
「え?」
「名前だよ名前」
「なまえ、みょうじ…」


みっともないと咎められることもない。
今は自由だった。
そんな、賑わうダイアゴン横丁で俺はなまえに出会った。
本屋の軒先でぽつんと立ち尽くしたままの女の子。


「お前もホグワーツ…?」
「そうだよ」


ちらっと腕に抱えられた数冊の本に目を移した。
何冊かはホグワーツで指定されているもののようだった。


「これは?」
「これは私がパパにお願いして買ってもらった本なの」
「ふーん…」


差し出された本をパラパラと眺めた。
これはどちらかといえば本というよりも。


「図鑑?」
「うん、鉱石の図鑑。好きなの」
「変わってんな」
「そうかな?」
「変わってるよ…これ、綺麗だな」


パラパラ捲る指を止めた。
それはラピスラズリだとなまえは言った。
今までに知らない新しい何かに出会った時の胸の高鳴りを感じた。

もっともっと話したかったのに、なまえの父親が本屋から他の本を抱えて出てきたものだから会話は終了した。


「じゃあななまえ、ホグワーツで会えたらいいな!」
「うん、また会いましょう」


そしてなまえは父親に連れ立ってダイアゴン横丁の人混みに消えた。



09.09.18
少しばかり長くなりそうです。
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