3.5





襖を開けると、おそ松兄さんおかえりー!とトド松の声に迎えられて手近なソファーに腰を下ろした。
コンビニで調達したものと金を引き換えに、それぞれが頼んだものを渡していく。


「っていうか、おそ松兄さん遅くない?何してたの?」
「えー、んー内緒!」


トド松のフリして茶目っ気を含んだ感じに返したがそれは見事にスルーされた。
カラ松、チョロ松、一松、十四松の四人が麻雀卓を囲んでジャラジャラと洗牌する様子を傍観する。


「てか、今から始めんだよな?」


そう俺が卓を囲む4人に投げかければさも当たり前だと言わんばかりの視線が向けられる。まあ洗牌してんだから当たり前だよな。チョロ松が「何?代わって欲しいの?おそ松兄さんやる?」と聞いてきた。


「いや、んー…どうしよっかなァ。言っちゃおうかなァ、でもなぁ」
「何、おそ松兄さんキモイよ」


笑みが抑えきれなくて止まらない。トド松の抗議も右から左だ。
あの一松が女の子と出会ってて何気に向こうは気にしてくれてるだなんて、面白いことこの上ない。やっぱりお兄ちゃんみんなに報告する義務があるよなー、うん!


「それがさぁ、コンビニで女の子にナンパされちゃってさ」
「はぁ??!!」


5人が見事にハモった。あの童貞クソバカニートのおそ松兄さんに?!なんて人聞きの悪いことを言ったのはトド松と十四松だ。だけど、今のお兄ちゃんはそんなことでは沸点にも達しない。


「それがさぁ、名前ちゃんっていうんだけど、俺がコンビニ出たら追いかけて来てくれてさァ」
「おつり受取り忘れたの?」
「違う違う!店員じゃねーよ、会社帰りのOL!!」


OLという単語に色めき立つ。十四松に至ってはOLが何なのか分かっていない様子だったが話を進める。


「見たことある顔だって声かけられて」
「合コンで一緒になったことのある子かな?!」
「いや、これがそうじゃないみたいなのよ!しかも話聞いてくと俺じゃないみたいでさ…」


誰のことだったと思う?そう5人に投げかけると、ゴクリと生唾を飲む音がした。


「なーんーとー!………一松!お前だよ!!」
「……はあ?そんな名前の女知らないんだけど」


一松は興味が無いと言わんばかりにしれっと返し、他の4人は項垂れていた。なんで闇松兄さんなんだよ!とトド松に至っては涙目になっている。
名前ちゃんに聞いたざっくりとした話を一松に伝えるも、さほど表情は変わらず「…あぁ、そういえばそんなこともあったね」とぼそりと呟いた。
マジか!マジなのか!!と兄弟は絶叫し、一松を中心としたプロレス大会開幕のゴングが鳴った。