▼13話 事故? ※ヒロイン六つ子姉設定



「カニとか久しぶり!さっすが正月!!」


家族で鍋を囲む。今日の夕飯はカニすき鍋だ。正月休み最高!と両親や弟達と一家団欒を決め込むが、チョロ松は今すぐにでも人を殺してしまいそうなぐらい荒んだ視線を向けていた。それに敢えて触れずに箸を動かしていたのだが、トド松は満を持して口を開いた。


「チョロ松兄さんどうしたの?」
「お玉とってチョロ松!」


チョロ松はトド松やおそ松の言葉にも返事をせずただただ、じとっとした嫌な視線を送り続けている。おそ松に至ってはそんなことを気にもとめずに、返事の無いチョロ松に代わって自らの手でお玉を取るためにちゃぶ台に身を乗り出した。


「出汁が入れたいんならそういえばいいじゃん」


そう私がおそ松に声をかけたとほぼ同時ぐらいに、チョロ松はお玉に手をかけてその熱々の鍋の出汁をおそ松にかけた。


「だぁぁぁあっちぃ!!バカじゃねぇの?!バカじゃねぇの???!!」
「なにしてんの?」
「あー…ごめん。例え兄弟であろうとやっていいことと悪いことがあったね。ごめんねぇ」


熱がり、そのチョロ松の傍若無人ぶりに怒るおそ松とその状況を飲み込めないトド松。熱々の出汁をぶっかけたチョロ松はドスの効いた声で言った。それはあからさまにおそ松に対しての怒りを孕んでいた。


「お姉ちゃんさぁ、ご飯の時ぐらい静かに食べたいんだけど」
「ほんとほんとー」


私の発言に同調するトド松。はたまた、ちょっと洒落が効いた感じで責められたよ?とどうやら心当たりのある様子のおそ松。


「え?おそ松兄さんなんかしたの??」
「別にー??さっき見ちゃっただけだよチョロ松のオナニー」



こらぁ!!言うなぁ!!!と鬼の形相で被せてきたチョロ松を横目に鍋からカニ身を取る。


「いいじゃん別にー。兄弟なんだし」
「兄弟だから余計知られたくないの!!それになんで姉さん居てるこの場で言うかなぁ!!!」
「あ、私のことはお構いなく」
「構うわ!!!!」


たしかに弟達の性事情など聞きたくないが、あの真面目なチョロ松のそれには少し興味もある。


「だから気にしなくていいって!シコ松」


悪びれる様子もない長男に、三男はちゃぶ台に勢い良く手をつき立ち上がり、怒りを顕にした。今にもおそ松に殴り掛かりそうな雰囲気だ。


「ちょっと待ってぇぇえ!謝って!」
「あ?」
「さすがにシコ松とか呼んじゃだめ!だって………面白すぎるよー!!!」


止めたと見せかけてそれに乗っかるトド松。うん、このノリ松野クオリティだ。思わず、他の弟達に便乗して笑った。振り返ってダイニングの方を見ると、お父さんとお母さんも口に手を当て笑いをこらえていた。


「てか、前からこいつのこういうとこほんと嫌い!マジでデリカシー無い。なんで言っちゃうの?!テンションだけのガサツ人間!死ね!!」
「はぁ?じゃあ言わしてもらうけど、そんな人間のエロ本を黙ってこっそり借りてるのはどこの誰?」


長男と三男の醜い言い争いを傍観する。まぁ、男同士色々あるよね。おそ松の暴露にみんな一様にチョロ松から距離を取って非難した。しかし、おそ松の爆弾投下は終わらなかった。


「いや、お前達全員同じことやってるの知ってるからね」


その言葉にサァーッと青くなる次男、四男、五男、六男の顔を見るともう笑い転げずにはいられなかった。まさか、おかずを兄弟で使い回していたとは。そしてみんな自らの隠し場所を暴露し始める。


「この家エロ本何冊あんだよ!」
「でも、俺は別にいいのそれで。だって兄弟だし、エロくても変態でもへーき。なのにこいつときたら、なーんか自分だけは違いますスタンス?特にあの就活してますアピールが腹立つ!結果何もやんねーし。やってることと言えば部屋で1人しこし………っいってぇな!!チョロシコスキー!!!」


おそ松にポン酢が飛んだ。そしてチョロ松の怒号も。そして長男と三男の取っ組み合いの喧嘩が始まった。


「はあ、ごちそーさま。もう片付けるよ?」
「あ、姉さん…カニ、もうちょっとちょーだい」
「はい、一松」
「ありがと」


あ、そうだ!明日カニ雑炊しよっか!という私の提案に、殴り合いを続ける長男と三男以外が満場一致で同意した。



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