▼3話 こぼれ話集内パチンコ警察



深夜、松野家兄弟達に呼び出された。事のあらましを電話で聞いた私は不覚にもそれに乗った。そう、一枚噛んでしまったのだ。
世のパチンコ店は風営法の規制上、この東京都赤塚区に至っては午後11時閉店が常だった。今回は、なかなか帰ってこない末弟をいろんな意味で心配した兄達からの呼び出しだった。


「…トド松?あ、見ぃつけた!」


嬉しさ半分、困惑の表情でパチンコ店を小走りで出、その途中のビルの隙間で百面相するトド松に声をかけた。いつものトド松のように語尾にハートが飛ぶんじゃないかってぐらい、甘さを乗せた声色でトド松を呼ぶ。パチンコ龍で張ってて良かった。というより奴ら兄弟はいつもここで打つのだ。馬鹿の一つ覚えかと言わんばかりに。


「ふぇ?名前ちゃん?こんな時間にどうして…?」
「ん?トド松のこと探してたんだよ?」


会いたかったよ、の台詞付きでトド松のパーカーをぎゅっと握った。
トド松はそれに満更でもない表情で、どうすればいいのかとまごついていた。
そしてそんなトド松を尻目に、無線機を取り出して仲間という名の兄達に状況を伝えた。


「被疑者確保!パチンコ龍付近路地裏にて。大量の万券所持の疑いあり、至急応援願う!」
「っは?名前ちゃん何言っちゃってんの?え?えぇ?!ま、まさか…!」
「ごめんねトド松。買収されちゃった!」


てへ、とトド松のあざとさには適わないがおどけて見せるとトド松は舌打ち一つで脱兎のごとく逃げ出した。一松から手錠借りといたら良かった。


「ごめんみんな、被疑者逃亡!赤塚団地方向に向かって逃走した模様」
「はあ?名前何やってんの?バカじゃんしっかりしてよ」
「うっさいおそ松!アンタにバカなんて言われたくない!」


無線でバカだのアホだの不毛なやり取りをしつつ、赤塚団地の方を目指した。時間はすでにてっぺんを優に過ぎていた。寒さ忍び寄る夜空の下で何やってるんだと自嘲しながらもトド松を探した。
カラ松の好きな静寂に包まれた赤塚団地での兄弟のやり取りはとても目立っていた。遠目からでもすぐに分かり、私が着いた頃にはトド松は兄達に囲まれていた。どこまで本気なのか銃撃戦にまでなっている。そして、あっという間に抵抗の甲斐なくトド松はおそ松、カラ松、チョロ松、一松、何故か警察犬姿の十四松によって取り押さえられた。
午前1時25分赤塚団地にてパチンコ祝儀隠蔽法違反でトド松はお縄についた。


「ひどいよ!なんで名前ちゃんまで!!」
「ごめんね、トド松。皆で山分けしないかって、美味しい物食べさせてくれるなんて珍しいこと言ってくれたからさぁ」
「お前もクズか!」
「ひどーい、トッティ」


項垂れるトド松の頭を撫でた。


「今日は寿司とろうぜ!」


兄弟の喜びの声と、ワオーンという十四松の雄叫び静けさの中に木霊した。



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てかさ、名前のその服やばいよねぇ。うん、そう、ミニスカポリス。