小説 | ナノ

事後、女性は男性との会話、所謂ピロートークに思いを馳せる。男性はその疲労感からの睡魔に襲われる。故に両者の間に亀裂が走る。まさに今の状況がそれである。
名前はシャワーを浴びた後、バスタオルを一枚体に巻き、その一糸纏わぬ姿のまま、ベッドの掛け布団にくるまっていた。俺はというと、そんな気力もなくただただ、ベッドに横たわっていた。やり終えたまま、同じく全裸で。パンツぐらい履けよって我ながら思うが、それを探す気力もないほどにくたばっていた。パンツと共に散らかっているであろうティッシュペーパーがそれを物語っている。日頃の運動不足、セックス自体久しぶりっていうのもあったのかもしれない。しかし片方の名前は元気なようで、矢継ぎ早に色んな話をしていた。
仕事の話、趣味の話、家族の話、テレビの話、その他色々。


「ねぇ、一松聞いてる?」
「ん、聞いてる。」
「じゃあ私がなんて言ったか覚えてる?」
「…覚えてない。っていうかごめん、寝かせて。」


眠たくて名前の顔を見る余裕はないが、きっとその頬は膨れていることだろう。そりゃ俺だってもっと、話がしたい。いやむしろもう一回戦興じたいとも思う。ただ、体がついていかないのも事実。どこかで、いや多分おそ松兄さん辺りだと思うけど男性は一回のセックスで消費するカロリーは100メートルを全力疾走した時と同じらしい。つまり今の俺は100メートルを全力で完走したってことで。


「ねぇ一松!!」
「あのさ、100メートル完走したんだからちょっとそっとしといてくれない?」
「なにそれ?一松夢見てんの?何の話?」
「褒め称えてもいいと思う。」


本格的に寝よう、そう名前に背を向けて丸くなった。途端、一人になることに不服なのか#名前は俺にぴたっと寄り添ってきた。こういうところ猫に似てて好きだ。


「…なに?」
「一松素っ気ない。」
「…疲れてるだけ。」


ぎゅっと名前の方から抱きついてきてちょっと嬉しい。普段彼女の方からそんなにベタベタしてくることはないから、そんな些細な変化にも喜びを感じる。むしろ大歓迎。お互い素肌なのもあって、名前の胸の膨らみも背中で感じられた。


「一松、私のこと好き?」
「好きだよ。」
「良かった。」


そういって、事更に力を込めてギュット、名前は抱きついてきた。疲労感とか眠気の方が勝ってたんだけどな。


「名前、あのさ、結構、その、胸当たってるんだけど。」
「当たってるんじゃなくて、当ててるの。」
「えっ!?」
「ご不満??」
「まさか。」


普段よりもちょっと積極的な名前にドキッとして、数分前にはあった疲労感やら眠気といったものは全てどこかに消え去っていた。そしてあえてこのままの、背中を名前に預けた体勢でもう一度彼女の名前を呼んで、手探りでその右手を掴んだ。


「?一松?」
「名前、ごめん。」


先に謝りを入れてから、彼女の掴んだ右手をそっと自身の股間に導いた。ほら、と主張し始めるそこに手を這わせれば名前はそのことに気がついたらしく「バカっ」と照れたように呟いた。
さあ延長戦を開始しようか。




2016.03.02
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