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今までと比べものにならないくらいふんだんにクリスマスらしさを押し出した装飾に感嘆の声が零れた。
ホグワーツで過ごすクリスマスは今に始まったことではないのに毎回その壮大さには圧倒される。ブラック家の陰湿なクリスマスとは天と地ほどに違う。


「…シリウス?上ばかり見上げて、食べないの?」


くすりと笑みの含むその言葉にハッと視線を前に向けた。


「そんなに珍しい?」
「ん?いや、すげぇなって思ってさ」
「確かに今年はまた一段とダンブルドア先生力入れてるね」


未だにピカピカ光り続ける蝋燭や止め処なく降り続ける雪に魅力されながらも、豪華な食事をとることにした。


「他のみんな遅いね」
「悪戯に忙しいんだろ」
「ふーん?珍しいねシリウスが大人しくしてるなんて」
「うるせーお前が1人で先に大広間行こうとしたからだろ」


わざわざ付いて来てくれたの?なんて聞いてくるもんだからふいっとそっぽを向いてやった。


「そうそうシリウス」


なまえがローストビーフを切り分けながら言った。そしてご丁寧にもそれを俺の小皿に移してくれた。


「シリウス…はい、これ」
「っはあ?!」
「ちょっとシリウス声大きい…」


何人かの寮生がこちらを見た気がした。これ、と言ってなまえから差し出されたちょこんとヴェルヴェットレッドのリボンを掛けられたプレゼント。所謂なまえからのクリスマスプレゼント。
シチュエーション何それ美味しいの?と言わんばかりにムードのないそれに思わず声をあげた。イギリス人はロマンチストなのね、といつだったか皮肉られたことがあったがそんなの気にはならなかった。


「いらないの?」
「いるっ!」


目の前でにこにこ笑うなまえの顔を見ると先程のことなど言える訳もなく、ぐっと飲み込んだ。


「さんきゅ、な」
「うん」
「開けてもいいのか?」
「いいよ」


にこりと笑ったなまえの顔に弱いのは昔から。俺は大人しくリボンを解いて中身を確認した。


「こ、これ…」
「ゾンコに1人で入るのは勇気がいるね」


新しい悪戯グッズをなまえが1人でホグズミードのゾンコの悪戯専門店に買いに行く図を想像した。
途端、愛おしさが込み上げて抱き締めようと体が動いたが、それは豪華な食事が並ぶそれに阻まれた。


「シリウス落ち着いて?でも喜んでくれて嬉しい」


ふわっと笑ったなまえの顔を見た瞬間、胸がとくんと疼き俺はその笑顔に背を向け深紅の寮目掛けて走り出した。
なまえへのプレゼントは確かベッド脇のテーブルの上。



10.1.12
(10.1.15up)
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