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「…ごめん」


あなたのそのセリフ、その表情、馬鹿みたいに青い空、その全てに吐き気がした。


「なまえまだ気にしてんのか?」


談話室のソファにだらしなく座り、赤と金のグリフィンドールカラーのネクタイをいじりながらシリウスは言った。


「だから俺は反対したんだ、あんなキザったらしいウィリアムだかウィルソンだか知らないが」
「…今更そんなこと言わないでよ」
「もう忘れろよあんなやつ」


俺が忘却呪文をかけてやろうか、シリウスは笑いながら言った。
だけどあたしにしてみればそれは冗談には聞こえなくて。


「忘却呪文かけて欲しいよ本当に」


同じくソファに座り、うなだれながら言った。
夏休み前のホグワーツはイギリスと言えども暑い。


「はぁ、見る目ないなぁあたし」
「全くだな、目の前にこんないい男がいるのに」
「それって誰のことー?」


生憎談話室にはあたしとシリウス以外誰もいない。
何故なら昼食の時間帯だからだ。


「俺しかいないだろーが」


シリウスはあたしの顎のを辺りを片手で掴み無理矢理自分の方に向けた。
自然と視線がかち合う。


「な、何よ」
「俺にしとけよなまえ」
「何言っ…」


何言ってんのよバーカ、軽口叩いて大広間にでも向かおう。
そして先程の出来事は全て忘れて沢山美味しいものを食べよう。
例えそれが世間で言うやけ食いだとしても。
だがそのあたしの願いは叶わなかった。


「っ何すんの!信じらんないっ!シリウスのこと友達だって思ってたのに」
「それマジで言ってンのか」


さっきまでのおどけていたシリウスはそこには居なくて、その真剣なシリウスの眼差しに、綺麗なグレーの瞳に吸い込まれてしまいそうだった。


「俺はずっとなまえを見てた、チャラついたこともしてねぇしなまえが俺に振り向いてくれたらって思ってた」


確かにシリウスの浮いた話は暫く聞いたことがなかった。
いつからだと聞かれても分からない、それぐらい前から。


「っそういう冗談であたしのことからかうなら…」
「冗談でキスなんかしない」
「シリウス…」
「俺のことキライか?俺じゃ嫌か?」
「そんなんじゃないけど…」


急に色んなことが起こって整理しきれないのも事実。
少しばかりの沈黙。
それを破るのはシリウス。


「いきなり言われても困るよ…な」


シリウスはすっと立ち上がった。
あたしの方に背を向けている為どんな顔をしているのかは分からない。


「シリウス…」
「でも俺まだなまえのこと諦めた訳じゃねーから」
「え?」
「どっからどう考えてもあいつより俺の方がいい男だろ!」
「え!」


不敵な笑みを浮かべ振り返るシリウスに諦め、という文字は見当たらなかった。


「ぜってぇ惚れさせてやるよ、なまえ」


ニヤリと笑うシリウスをあたしはただただ見るだけ。
熱い。気温が。談話室が、あたしの頬が。
今までの追うばかりの恋や破れる恋にもしかすると終止符を打つことになるかもしれない、と思うと少しばかり胸が高鳴った。


「さぁて、そうと決まれば昼飯だな」
「な、なんで?」
「腹が減っては〜って言葉なかったっけ?」


笑うシリウスはきらきらと眩しくて、あたしはヤバいっと咄嗟に窓の外に視線をやった。

呆れるぐらいに清々しい青。
馬鹿みたいに清々しい青。
さっきまでの沈んだ気持ちとはここで決別しよう。

さようなら ウィル…なんとか!


どうやら落ちるのは時間の問題のようです。



09.09.17
シリウスは自信家であってほしい
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