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俗に人は長い人生において三度モテ期というものがくるという。そんなものは信じてもいなかったし、必要ないと思ってた。


「不愉快です」


目の前のレギュラスブラックはそうきっぱりと言った。というのも先程私が下級生に告白を受けた現場に彼が居合わせたからだ。


「あぁいうのはもっと人目を気にするべきです」
「まあまあ」
「先輩も先輩です、あんな曖昧な返事をして」


気を持たせたままにしておくつもりですか、ぴしゃりと言い放つレギュラスはまるで母親のようで少しおかしい。


「クリスマス前だからじゃない?」
「は?」
「クリスマス前は恋人作りに励むっていうか焦るっていうか」
「そういうものですか?僕には分かりませんし分かりたくもありません」


でも1人きりのクリスマスは淋しいでしょ?そう問い掛けるとレギュラスは思案するように黙りこくった。かく言う私はきっと恋人不在の友人達と集まって過ごすことになるだろう。それはそれで楽しいけれども、やはり恋人と過ごす甘いクリスマスというものに憧れを抱くこともしばしば。


「僕は、いまいち分かりません」
「何が?」
「恋人という卓越した存在そのものが」
「一緒にいて安らげる人っていうか、人それぞれ求める人は違うものだよ」
「なまえ先輩は一緒にいて安らげる人を恋人にしたいんですか?」


好きになる、が前提の話だけどね。そう言うとレギュラスは相変わらずの思案顔で好きになる、と反濁した。


「レギュラスはそういう人いないの?」
「はあ…今まで考えたことがありませんでした」
「ふーん?」
「でもあなたといると安らげます」
「…ありがと」


内心ドキリとしたが顔に出さないようにさらりと礼を返すとレギュラスはぶすっと顔をしかめた。精一杯のレギュラスなりの気持ちの吐露なのかもしれない。


「まあまあ、クリスマスは共に楽しもうではないか」
「はい」


2つの緑のネクタイが風に翻った。



09.12.13
恋愛不器用なレギュラス
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