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文献で読んだ。イギリスと同じ海に浮かぶその島国を、マルコポーロはジパングと呼んだのだと。


「で?」
「だから見てみたいんです」
「私の家を?」
「いや、正確には日本を」


レギュラスは素知らぬ顔で言い放った。事の発端は、試験も終わり近付いた夏休みに対する話だった。そもそもブラック家はレギュラスブラックの外出及び外泊を容認するのだろうか。


「それ、あなたのお母様は許すの?」
「何とかしてみせます。今から手紙を出し続ければ分かって下さいます、きっと」


きっと、はレギュラス自身に言い聞かせたものだろう。
彼女の家に泊まります。それも外国に。だなんてきっと許しは出ないだろう。ならばレギュラスはスリザリンらしい狡猾さで巧みにあることないことを虚偽し母親を騙すのではないだろうか。


「どうなっても知らないからね」
「なまえさんの両親は反対されますか?」
「ん?んーでもレギュラスの存在は知ってるし…」


にこやかな両親の顔が浮かんだ。何度も両親宛てにふくろうを送り近況を報告した。レギュラスという彼氏が出来たこと、喜んでいたし反対はしないだろうけど。
「もしダメならゲストハウスに泊まります」
「うちには離れしかないですけど」
「離れ?」
「来たら分かる」


ぴしゃっと話を切った。しょうがないので両親に手紙を出すことにする。


「なまえさん」
「何?」
「なまえさんは嫌ですか?」
「…や、じゃないよ?ただ」
「ただ?」
「ただちょっと恥ずかしいだけっ」


くるりと背を向けて部屋に戻る。けして逃げる訳ではない。ただ手紙を書くだけ、それだけだ。背を向ける瞬間にくすりと笑ったレギュラスの顔を目の端で捉えた気がしたが、気のせいかもしれない。
さて、なんと手紙を書こうか。



09.11.25
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